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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
681/1603

3n

 書類を交わし、両国が全面的な協力体制を築くことがここに約束された。

 これは善大王が火の国に飲ませた限定的な協力とは大幅に違い、実質的な国家の融合を意味している。

 指揮権は当面の間は両国に分かたれているが、作戦行動は一丸となって行う。魔物の襲来に合わせ、天と光の混合軍が出撃できるという流れだ。


「──とはいえ、本格的に防衛地点を固定できるまでは兵員の交代程度だろう」

「そうなりますね。天属性の術者が加われば、火力面の不足も補えます」

「光の術者にも期待している。こちらの術者は戦いが始まるまで、回復を軽視していたものだ」


 将来的には両国の村や町の民を避難させ、一カ所に集中させる。そうすることで、要防衛地点を縮小し、戦力の集約率を高めるという狙いだ。

 この部分こそが、貴族達が批判するだろうと(もく)されていた部分であり、縮小の過程で一時的に城の放棄を要求される者は、これを是とするはずがなかった。

 だが、これについても戦争の終結という目標を自覚させることにより、変化させることのできる考えだった。


「では、よろしく頼む」

「はい、こちらこそ」


 握手を交わし、これにて仕事も終わり……と考えていたダーインに、予期せぬ言葉が向けられた。


「重要なことを言い忘れていたな。契約を交わしたばかりではあるが、聞いてもらいたい」

「……なんでしょうか」

「天の国はそちらの宰相によって、この方針に異論をなす者はいない。しかし、そちらの国で反対を訴える者達が出た場合、関係は考えさせてもらう」


 ここにきて、もっとも痛い条件追加が行われてしまった。

 民衆の統御は今後の課題であり、具体的な戦力例を見せてから解決するというのが、シナヴァリアの意見だった。

 しかし、これでは公式に布告すると同時に神皇派が意義を申し立てるだけで、これまでの苦労が水の泡となってしまう。


 この協定に費やした金額を考えるに、神皇派も下手に暴れるとは考え難い──というのは、事情をすべて知った者の思考にすぎない。

 善大王を崇拝しているような集団であるからして、その意志の介在しない行動はすなわち、批判して然るべき愚行となる。同様の方法で善大王が行っていれば、これを素晴らしい歴史的偉業と讃えることだろう。


 その上、彼は神皇派の首領であるタグラムの出方を知っているのだ。


「(あの男は間違いなく、これを通さない。もし、私がビフレスト王の条件を伝えたとして、あやつならば独断専行の宰相を追い落とすことを優先するだろう……)」


 平静を装ってはいるが、彼の内面は相当に荒れていた。当然のことだろう、これは宰相の行った強行策の土台をはね飛ばすに等しい行動なのだから。

 これが塔のように積み上げた積み木ならば、(うま)く弾くことで瓦解(がかい)は免れる。

 だが、強行策とは読んで字の如く、この最終到達点に至るまでのピースは複雑怪奇に置かれていった。人心の軽視という土台を取り除く場合、どのように取り繕っても倒壊は必至。


「ここまで上手く立ち回ったライトロードだ。案ずるまでもないな」

「……」


 ついに、ダーインはなにも言い返せないまま、自身に命じられた仕事を終えた。



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