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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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13q

 ──ヴェルギン宅の外、砂漠にて。


「……」

「……」


 二人はぼけーっと虚空を眺め、会話をすることもなく黙りきっていた。


「(急に黙った……もしかして、私を一人にすることが目的?)」

「(この子ってどんな子なんだろ。わかんないから、変なこともいえないし……話しづらいなぁ)」


 二人はタイプの違うコミュニケーション障害を持っていた。

 フィアは単純明快、他人と関わる気がなく、そして場慣れしていないことによる沈黙。

 対するスケープは洞察力の発達に障害があり、相手との距離を測りかねている。それが分からない状態に陥ると、試しの会話さえできない程に臆病であった。


 普通であればどちらかが切り出すのだが、二人は本当の意味で沈黙を続けていた。

 極端な話、両者とも相手に興味がない。知りたいと思えば多少のリスクは承知で会話が成立するものだ。

 それが欠如しているとあれば、この状況もさほどおかしなものではないと分かる。


「(ライトまだかなぁ……)」

「(スタンレー(あのひと)は今頃なにをしているんでしょうか)」


 互いに互いを眼中に入れず、時間だけがすぎていく。だが、こうした状態は良好なものともいえた。

 フィアがいることにより、彼女を無視して二人の会話を盗聴することはできなくなり、結果的に善大王が組織を疑っていることがスタンレーに伝わらなくなった。

 ただ黙っているだけにもかかわらず、この無愛想な巫女は恋人の望む状況を維持していたのだ。

 ──しかし、それは永劫に続くものではなかった。


「あなた、昔はいなかったけど……何なの?」

「えっ?」

「だから、何なの?」


 予期せぬことに、フィアが先んじて切り込んだ。


「何、といいますと?」

「だから、何様? 何者? どうやって取り入ったの?」

「(この子、さっきまでと全然違って、怖い……なんか目もジトっとしてるし、態度もでかいし……)」


 誰かがいないと性格が変わるのは、ある意味お互い様といったところだろう。

 先ほどまでのスケープはヴェルギンを対象に取ったものであり、彼がみているという安心感からか、あのように軽く振る舞えていた。

 それは任意のように見えて、実は反射に近いものだった。故に、彼女一人になってみれば、あのような態度は恐ろしくてできたものではない。


 対するフィア、こちらは任意なのか強制なのか判断に困るもので、善大王という自分をみてくれる人を失った時に態度が急変する。

 言ってしまえば、好きな人がみていないところでは気を抜く、典型的な怠け者女子といえるだろう。


「早く」

「えっ、はい! ワタシは強いので弟子にしてもらえました!」

「強い? あなたが?」

「はい、相当に」

「……そうは、みえないけど」


 ヴェルギンの時の態度、今こうしてみる様子、どちらを取っても強い人物には結びつかない。

 《選ばれし三柱(トリニティア)》であるとしてもカイトのような例がある為、物腰の柔らかさだけで実力を調べることは困難だが、彼女の場合は放出される魔力も大したことがないのだ。


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