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「は? そんなことありえねーって。だから言ったっしょ? そんなことをすれば──」
「雷の国に攻撃を行うとした理由は分かりますか?」
「……どーせ報復目当てっしょ? アタシらが闇の国を見逃したって因縁をつけたいだけだし」
あくまでもその意があったとは言わず、ライカはある意味大人な対応を取った。
「はい、雷の国が見逃したのは自明の事ですが、あの人はそれを大義名分に利用しようとしているのです」
「は? 言いがかりも程々に──」
「フォルティス王の目的は雷の国の占領です。その点からすると、先ほどのライカちゃんの方法では不足が生まれます」
あまりに突飛で、不合理であったからか、電撃姫は嘲笑を向けようとした。
しかし、シアンの真っ直ぐな瞳に気圧され、喉奥にまできていたそれは押し戻された。
「もとより、フォルティス王は戦争を起こそうとしていました。その前に夢幻王──ダークメアが宣戦布告をし、魔物の襲撃が発生した為に延期されていただけにすぎません」
あり得ないと言うのは簡単だが、水の国の文化路線の軽視、急激な軍国化が戦前から起きていたことを考えると、これを断じるのはいささか浅はかと言える。
ライカから笑みが消えるのを確認すると、シアンは海上部隊総司令の顔になった。
「ライカちゃんに頼みたいことがあります」
「今の話を聞いて、アタシが聞くと思うっての? ……なんならここで消してもいいし」
この場はフィアによって作り出されたものだが、当の主は席を外しており、両者の仲裁を行える人物は不在と言える。
「この場所では戦えませんよ。それに、無理を言うつもりもありません」
「……とりあえず、聞くだけは聞いてやるし」
歌姫は笑みを浮かべ、会釈をした。
「両国の争いを止める為、フィアちゃんとティアちゃんには協力をお願いしています」
「アンタにしては目の付け所がいいじゃん。あの淫乱と馬鹿なら、簡単に懐柔できそうだし」
「……あの二人なら自由に動け、かつ停戦という目的に協力してくれると判断しました。ライカちゃんの言ったような理由ではありません」
「アンタも言うようになったじゃん」
口は悪いが、ライカの言い分も的を射ている。
フィアとティアは《星》の中では圧倒的な穏健派で、協力を申し込めばそうそう断ることもない。何より、勢力が余裕を持っているという強みもある。
アルマは戦闘に適しておらず、ライムについては現在進行形で敵国に在る。こう表現すると、とても分かりやすいかもしれない。
──しかし、淫乱というと両者に当てはまるのではないだろうか。




