表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
61/1603

7

 魔物討伐記念と銘打たれているが、ビフレスト王のことだ、娘が社交的になったことが喜ばしいのだろう。

 それを示すように、ビフレスト王は制限なく酒を流し込んでいた。

 俺はというと、遠慮気味に、それであって文句を言われない程度に酒を飲んでいた。もちろん、まったく酔いは回ってこない。

 退屈しているのは俺だけではない。もう一人の主役であるフィアも、目の前に置かれた食事をフォークで突きながら、食べもしないでぼーっとしていた。

 不意にビフレスト王が手招きをしていることに気付き、俺は席を立った。


「はい」

「いや、よくやってくれた。善大王がいなければ、この国は滅びていたかもしれない」


 フィアがいたことを考えると、そうとは考えづらい。しかし、卑屈になるのは正しくない。


「有り難きお言葉」

「それで、《風の大山脈》の件はどうなった」


 目が鋭くなったのを確認し、俺は額から汗を流した。

だが、思ったよりも焦っていない。一度死を体験しただけに、少し感覚がずれたのかもしれない。


「失敗しました。申し訳ありません」

「……だろうな。ウィンダートが通さないだろうとは思っていた」


 その名が出た時点で、俺は驚いた。


「何故族長の名を」

「侮るな。かつて、私も対処に向った」

「ビフレスト王が……?」


 俺のような善大王が単騎で動くのも相当に異常だが、ビフレスト王は天の国の王だ。そんな要人が向うとは考えづらかった。


「まだ若い頃だ。勇気と蛮勇すら区別のつかない頃に向った。結果は同じだったが」


 失敗すると分かっていて俺を送った? 一体何の意味があって。


「善大王の考えていることは大体分かる。はっきり言っておこう、無理か可能かを取り違えるのは王として大きな欠陥だ。今回は遊びで流したが、正規の場であれば問題になっていた」


 善大王が最初から天の国と接触を図るのは、こういう理由があるのかもしれない。

 言ってしまえば、王として学ぶ為。実地としての訓練だ。


「これからは慎重に動きますよ」

「慎重になりすぎるのも考えものだ。王は決断を大胆に行わなければならない、ただ座っているだけならば誰にでもできる」


 シナヴァリアにかなり仕事を投げている俺からすると、結構耳が痛い。


「仕事の話はこれくらいにしておこう。ここからは個人的な話だ」

「はい」

「以前、善大王はフィアを外に出せと言った。忘れてはいないな」

「ええ、現状は良好のようですが、それは飽くまでも希望があるから。今後続くとは思えません」

「先の戦いを聞き、私も少なからず意見を変えた。……善大王は、フィアを守れるか?」


 それを言われた瞬間、俺はこの宴がどういうものかを理解した。


「……はい、守りますよ」

「その言葉に偽りはないな」

「神に誓って」


 言いきると、ビフレスト王は快闊に笑った。


「ならば、任せるとしよう」

「帰す時期などは」

「期限などはない。私が呼び出したときにだけ戻ってきてくれればな」


 あのビフレスト王がこの返答……奇妙だな。


「君にはまだ話していなかったな。何故、私があの子を城に閉じ込めていたのかを」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ