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「なるほど……あれが冒険者ギルドの切り札ということか。ならば、私も遅れを取るわけには行かないな」
既に鈍色の魔物と接触していた三人は、今まさに行われた冒険者の活躍に鼓舞され、動きの鋭さを増していた。
相手は高速戦闘を得意とする二足歩行のトカゲ。一発一発の重さこそ重量型に劣るが、それでも軍団規模であれば対応することができない速度だ。
巨躯を生かした尻尾での広範囲攻撃、四肢から放たれる踏みつけや切り裂き。一度でも直撃を受ければ、間違いなく戦闘続行は困難となる。
しかし、三人はそんな猛攻と対峙しながらも戦線を維持していた。犠牲者どころか負傷者すらでていないというのだから、練度だけでは語り尽くせない凄みを感じさせる。
そして、これは維持を目的とした前段階。戦意を高揚させた彼らは対抗に留まらず、むしろ攻めに転じていた。
ライアスの放つ刺突は装甲が薄い相手とはいえ、明確な怯みを生み出すほどの威力を叩き出している。それが導力によって強化されたものではなく、単純な技術から打ち出されているというのだから異常だ。
そんな彼に続いて二人の騎士が脚部を集中的に攻撃し、機動力を削いでいく。動き出すというタイミングを逃さず、全員が射程外へと逃れていく動作については、一切の無駄を感じさせない。
「これがミスティルフォード最強と謳われる軍隊の実力……ってことね。この様子なら、エルズ達を欠いた部隊のほうも安泰ね」
エルズは一人、安全な距離から状況を窺っていた。
操っていたバグの内、残っているのは十体。残存個体は今も三人を支援しており、死亡した個体は彼らの壁として使った。
そう言った意味では、彼女の貢献も相当なものであり、戦線の安定向上に大きく寄与している。 でありながらも三人を評価するのは、彼女が他でもない《選ばれし三柱》だからであろう。
《風の星》、《闇の太陽》……その両者は言葉通りに一騎当千の実力を誇り、通常の人間と比較するには過ぎ足る逸材であるのだ。
そんな彼女らに合わせ、こうも真っ当に戦えているというのは、並の実力からは想像もできないことである。
それこそ、単純な戦力衝突を行えば《選ばれし三柱》を相手取れる戦力とも言える。
「ま、味方である限りは頼り甲斐に満ちた存在ね。敵になったときのことを考えたら、ゾッとするけど」




