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──ヴェルギン宅にて……。
「トリーチとやら、《盟友》のことを知りたくはないかのぉ」
「はい?」
トリーチ、ミネア、スケープの三人はトランプで遊んでおり、戦時中の緊張感を感じさせない態度をしていた。
「《盟友》は盗賊の掃討に成功したようじゃ」
「……何の話ですか」
「ヴォーダンが命じておったんじゃ。あの町に巣くう盗賊を討ち、盗みを減らそうとな」
聞き覚えのない話に、彼はミネアに視線を送った。
ただ、そこにあったのは鏡のような反応でしかなく、得ようとする情報がないことが分かる。
「皆はどこに」
「ガーネスじゃよ。なんでも、地下にアジトがあったらしいのぉ」
他人事に語りながら、ヴェルギンはスケープの背を見つめた。
「冒険者と盗賊が徒党を組み、一つの町を支配しておったんじゃ」
「……この時勢でそのような真似を?」
「あやつらが何を考えているか……ワシが知るはずもないのぉ。話の一つでも聞けば分かりそうなものじゃが」
言い回しから判断するに、彼は薄々理解していたのだろう。あの場で構築された武力が、自警団に近い存在だと。
とはいえ、スケープに命じたのはヴォーダン。偵察結果につける文句は、国王への批判にも等しい。
顧問の立場のみならず、臨時軍の司令官となってしまった今では、ヴェルギンが好き勝手に動くことはできなくなっていた。
……ただ、ティアがあの場に残っていればもっと厄介な事態になっていただろう。
無事に和解の道に進められたとして、独立した町での防衛には限界がある。一般論からすれば、大都市であるカーディナルへの迎合は理想的な展開だ。
戦闘が始まれば最後、《選ばれし三柱》達による理不尽なまでの力が振るわれる。
奇跡の連続で成立した状況も、首都にある者達には全てが同じ。ヴェルギンもヴォーダンも、なにが起きたのかを詳しく知らないのだから。
「まぁ、《盟友》側から死者は出ておらん。オヌシにとって、よい結果ではないかのぉ」
「は、はい……」
誇らしさや喜びはあるが、共に戦えなかった不満が何よりも勝っていた。
国の命を受けるほどの大戦への不参加は、凄まじい疎外感を覚えさせるのだ。いくら姫の護衛という大役だとしても、変わることはない。
「師匠、向こうの状況は伝えられているんですか?」
「勝利したこと、アジトの破壊に成功したことは聞いたが……他に気になることがあるのか?」
「《盟友》の実力はよく分かっているけど、この戦力比で犠牲者が出ないって……おかしくないですか?」
「……ワシも多少は気にしておったが、連中ならばおかしくはないと判断した」
二人は真剣な様子で話し合っていた。常々ふざけているわけではないにしろ、ミネアが疑問を抱いたとなると、それは子供の質問では済まないのだから。
……それ以上に、ヴェルギン自身、彼らについては盲目になっている節があった。だからこそ、知らなぬ者の目線を欲しがった。




