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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
483/1603

5s

 歩きながら、ウルスは呟く。


「あいつは厄介な人間だ」

「それはこっちのセリフよ。なんで追及をあの程度で終えたの?」

「なにも分かってねぇクソガキは黙ってろ」


 閉じた唇の中では歯が食いしばられており、高飛車な女性が暴行に遭おうとしている時のように、非言語的な抵抗を見せた。


「僕も分からないんですけど……」

「あいつは冒険者ギルドの現状をよしとはしていない」


 その言葉を聞いた途端、二人の冒険者は驚きを見せた。ただ、その後の行動は対照的だ。

 エルズはすぐさま反論の体勢に入ったが、クオークはというと、言葉の意図を探ろうと思考を巡らせはじめている。


「はぁー? そんなわけないじゃない。もし正義感があれば、あんなことをするわけがないわ。そんなこと、ティアでも分かることよ」彼女は軽蔑するように、屁理屈を吐く子供のように言う。

「ならば、あんなこと(・・・・・)をするならば、どういう目的だと考える?」

「……エルズ達を同士討ちさせる為?」


 「ハッ」と嘲笑にも似た声を漏らし、「なら、俺だけが来ると言うわけがないだろ? あいつの狙いは俺だったんだよ」と溜息混じりに解答を示す。


「ずいぶんな自己評価ね」

「俺は戦前に魔物を狩った。表ではかなり信憑性の高い噂……という扱いでしかないが、上層部はその真実を知っている」


 戦前、つまり戦闘ノウハウが存在しない時点で討伐をやってのけた──しかも一人で達成したというのだから、彼の持つ戦力的価値は計り知れない。

 だが、ここで重要なのはそんな事実的情報ではないのだ。具体的に言えば、最前線に立たせることのできる、冒険者ギルドの旗印の候補。

 過去に残した偉業、それに裏打ちされた実力を示すだけで、事実は雷雲の如く勢いで巨大化していく。


「オッサンの理屈があってるとしても、それは戦争の早期終結が狙いじゃない?」

「それも副産物として発生するだろうな。奴の狙いはギルドでの地位を高め、最終的に丸ごと乗っ取り、現状の組織形態を崩すことだろうな」


 告げられたのは、冒険者ギルドの再建。あまりに現実離れし、黙って聞いていたクオークすら眉を顰めた。


「なんでそう思ったのよ」

「あいつの言った、俺と同じというのはそういう意味だ。十中八九、あいつは俺が当時行ったことを知っている。だからこそ、利用できると──同じ目的の人間として信用できるとみたんだろうな」


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