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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
471/1603

9

 ──アルバハラ、屋敷内の一室にて……。


「なるほど、これが狙いだったのか」


 スタンレーは棚に置かれている銃を幾つか改め、奇妙な形状をしていた銃を手に取る。


「勘違いするな。おれは奴に要求されただけ──銃を受け取る為に」


 その銃は大型拳銃以上の大きさだが、飽くまでも拳銃の体裁を持っていた。

 スライド排莢機構──ポンプアクションというらしい──のような動作が行われているが、薬莢どころか何も出てこない……むしろ、ただ普通にスライドで開閉しているだけのように思える。


 途端、鋭い板が善大王の首元を掠り、壁に突き刺さった。

 首を僅かに動かし、眼球でそれ(・・)を探ろうとする。片方の目は、依然として昨日の友に向けられていた。

 刺さっていたのは、一枚の紙。形式などが違うが、その紙板には見覚えがあった。


「トランプなのか……? しかし、今の勢いは──」

「紙を飛ばすだけの玩具だ」

「そんなモノの為にあの戦いを? お前らしくもない」


 ただの冗談にすぎなかったが、スタンレーは白い法衣の胸倉を掴んだ。


「貴様におれの何が分かるッ!」

「言葉の綾だ。なに、お前の趣味を否定したわけではない」


 明らかな怒りを覗かせていたが、彼がそれを抱くに至ったのに、趣味は──手に握られた奇妙な拳銃は関与していないように見える。


「貴様と馴れ合うのは今日限りだ」

「ああ、そのつもりだ」


 盗人が立ち去り、善大王は改めて部屋の中を見渡した。

 数多くの銃器が並び、拳銃から長身の銃、筒状のものまで混じりこんでいる。それらの全てに共通するのが、《武潜の宝具》であるということ。


 王と交渉を行うだけの政治力はおそらく、この点にあるのだろう。

 不意に、彼は目に付いた拳銃──自動式のものだ──が飾られたガラスケースの前に張り付き、凝視する。

 この部屋の銃は大半が、机や台にそのまま載せられている──一応ビロードの上なので、高級感はある──為に、こうした個別の管理が行われているものは珍しかった。


 だが、彼の目を引いたのはその点ではない。

 常々少女にだけ向けている興味を逸らしたのは、木製グリップの部分だった。


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