9
──アルバハラ、屋敷内の一室にて……。
「なるほど、これが狙いだったのか」
スタンレーは棚に置かれている銃を幾つか改め、奇妙な形状をしていた銃を手に取る。
「勘違いするな。おれは奴に要求されただけ──銃を受け取る為に」
その銃は大型拳銃以上の大きさだが、飽くまでも拳銃の体裁を持っていた。
スライド排莢機構──ポンプアクションというらしい──のような動作が行われているが、薬莢どころか何も出てこない……むしろ、ただ普通にスライドで開閉しているだけのように思える。
途端、鋭い板が善大王の首元を掠り、壁に突き刺さった。
首を僅かに動かし、眼球でそれを探ろうとする。片方の目は、依然として昨日の友に向けられていた。
刺さっていたのは、一枚の紙。形式などが違うが、その紙板には見覚えがあった。
「トランプなのか……? しかし、今の勢いは──」
「紙を飛ばすだけの玩具だ」
「そんなモノの為にあの戦いを? お前らしくもない」
ただの冗談にすぎなかったが、スタンレーは白い法衣の胸倉を掴んだ。
「貴様におれの何が分かるッ!」
「言葉の綾だ。なに、お前の趣味を否定したわけではない」
明らかな怒りを覗かせていたが、彼がそれを抱くに至ったのに、趣味は──手に握られた奇妙な拳銃は関与していないように見える。
「貴様と馴れ合うのは今日限りだ」
「ああ、そのつもりだ」
盗人が立ち去り、善大王は改めて部屋の中を見渡した。
数多くの銃器が並び、拳銃から長身の銃、筒状のものまで混じりこんでいる。それらの全てに共通するのが、《武潜の宝具》であるということ。
王と交渉を行うだけの政治力はおそらく、この点にあるのだろう。
不意に、彼は目に付いた拳銃──自動式のものだ──が飾られたガラスケースの前に張り付き、凝視する。
この部屋の銃は大半が、机や台にそのまま載せられている──一応ビロードの上なので、高級感はある──為に、こうした個別の管理が行われているものは珍しかった。
だが、彼の目を引いたのはその点ではない。
常々少女にだけ向けている興味を逸らしたのは、木製グリップの部分だった。




