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大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
46/1603

10

「試練はこんなもんじゃな。手を抜いていたが、二人相手にここまで戦えれば十分じゃろ」

「これで俺は魔物に勝てるのか?」

「勝てる、とは言っておらん。飽くまでも時間稼ぎ程度ならば出来る、といったところじゃな。一度言ったと思うが、一人で相対しようとする相手ではないんじゃよ、その時は誰かに頼るといい」


 ティアは一人で戦っていた、と言いかけたが、それは口の中で留めた。

 巫女は人間とは隔絶した実力を持っている。それを言われてもなお、俺でもできるなんてことを言う気はない。


「善大王、修行が終わったからって調子乗るって無理するんじゃないわよ」

「なんだ? 俺を心配してくれているのか? いや、ありがたいばかりだ。ミネアが俺に心を開いてくれるなんてな」

「仮にもあんたは弟弟子だからね。ま、そうじゃなくてもフィアのこともあるから」

「フィア?」

「なんでもない」

「そっか。まぁ、俺はそろそろ帰るとするか。国の仕事を任せっぽなしにするのもアレだしな」


 ただ、その前に闇の国に寄って聖堂騎士と合流しなくてはならないな。俺が呑気に修行をやってしまったものだから、彼等の到着するタイミングとかち合ってしまった。

 強くなったというよりは視野が広がった程度だが、それでも元同僚の手助け役には十分だろう。


「……もしも闇の国に行くようなことがあったら、注意しなさい」


 いきなり言われ、俺は驚いていしまった。


「なんでそんなことを言うんだ?」

「ただの老婆心よ。それと、向こうじゃ子供に手を出さないのが得策ね」

「病気が多いとは聞いていないが?」

「そう言うことじゃなくて――とりあえず、覚えておきなさい!」


 俺は頷くと、二人に頭を下げてから王宮へと向った。

 番兵も俺については知っているらしく、何も言わずに通してくれた。


「善大王殿、何用か」

「馬車を貸してくれないか? そろそろ、俺はこの国を出ていく」

「そうか、碌な相手ができなくて申し訳なかった」

「いや、そうでもないさ。ヴェルギンからは多くのことを教えてもらった」


 魔物に勝てるかどうかは実際に戦わなければ分からない。しかし、以前よりかは可能性があるように感じている。


「うむ、それでだな……ミネアの件だが」

「あの件については俺が早計だった。許してくれとも言う気はない、問題があるなら光の国が賠償を支払おう」

「そのような無粋な話をしたいわけではない。善大王殿が良ければ、ミネアを嫁にもらってはくれないかと思っただけだ」


 娘を襲おうとした奴にそんなことを言うなど、あまりに無策すぎる。


「状況が状況だと言え、俺はミネアを襲った人間だが?」

「相手が善大王殿なら文句はないのだ。それをきっかけに光の国との協定も図れる、ミネアには鞘に収まっていて欲しいというのもあるが」


 そうは言われても、俺は幼女と結婚する気は一切ない。

 束縛する気もなければ、されたいという願望もない。自由気ままに舞い、その日その日で楽しい夢に酔えれば十分だ。


「嬉しいお誘いだが、遠慮しておく。ミネアは姉弟子、友人のような関係だ」

「……そうか、考えが変わったらいつでも言ってくれ」


 俺は冗談のように頭を下げてみせた後、王宮を後にした。

 外に出ると早々に馬車が用意され、俺はゆっくりと乗り込んだ。

 行き先は雷の国、そこからは定期船で闇の国に渡って聖堂騎士と合流……結果を伴って会うわけではないので気まずいが、それは良しとしよう。

 発進し、揺れる馬車の中、俺は疲労感に押されて眠りについた。

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