表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
446/1603

2x

 散策を終えた二人は宿屋に泊まることにし、部屋に入ってそうそうにヒルトはベッドに腰掛け、アカリは処々の作業を行い始めた。

 部屋に探知式がないことを確認し、天井板を抜き、そこから余所の客室を覗きに行けるようにと。

 天井裏の材木を削り、木屑を取ることも忘れずに、彼女は全ての用意を夜食の時間までに終わらせた。

 今回の宿では夜食と朝食が振る舞われる。昼は表のマーケットに赴き、それぞれにご勝手に、がルールのようだ。

 晩餐の席に集っていた者の多くが旅人らしく、商人や冒険者、子供を連れた夫婦までいる。

 特に会話が行われることもなく、平時はカフェの用を成していたと思われる一階では、部屋単位で丸いテーブルが用意されていた。

 突出したところもない食事をあっという間に食べ終え、急ぎ気味にかっこんでいくヒルトの様子を窺うアカリは──意地悪な姉のようにも見える。


 食べている最中に興味を抱いていたのか、男の子がヒルトの傍に寄ってきた。年齢は、彼女よりも少し下だろうか。


「お姉さん、どこからきたの?」

「あたしかい? あたしゃねぇ──」

「おばさんじゃないよ?」


 指先で机を何度も打ち付けると、彼の親らしき二人が席に着いたまま、頭を下げるような動作をした。


「……アルバハラから」

「遠いところ……だよね?」

「首都、ラグーンの近く。あんたの言う通り、遠いところだよ」


 今度は補足だったからか、おばさんという無慈悲な返しはない。


「ぼくはセルから来たんだ。せんそうが始まっちゃったから、その前に準備しなきゃって」

「セル……?」

「こっからずっと北の町」


 もはや通訳や解説役でしかないアカリは、二人組の子供の世話を無料で引き受けさせられていた。


「……い、つきたの?」

「少し前だよ。それから、ずっと泊まってるんだよ」

「ずっと? 帰らないの?」

「ママとパパがでちゃ行けないって──」

「よし、パツキン。さっさと部屋に戻るとするよ」


 少年の言葉を遮り、一人席を立つアカリに視線は集中する。


「でも、まだ……」と、残った野菜類に視線を落とした。

「わかんない子だねぇ、あんたが男の子と付き合うのはまだ早いのさ。あたしすらまだ独り身だっていうのに、生意気だよ」


 まさに意地悪な姉という様子で、心残りのありそうな表情をする二人の子供を引き離し、二階の部屋に戻っていった。


「もったいない、って前に言ってたのに。アカリ、言ってることが滅茶苦茶」

「細かいこと気にするもんじゃないよ! ……でも、あの話題は避けるべきだったねぇ」


 水の国では部分的な戒厳令が敷かれているが、この雷の国には人を縛るルールは存在していない──冒険者ギルドでさえ、その例外ではない。

 そのような状況で軟禁を余儀なくされている以上、裏に何かがあるのは明白だった。


「悪い人が閉じこめている?」

「そ、だから口を出さないのが正解さね──ま、今回はそうとも言えないけど」

「え?」

「子供二人が話したおかげで、怪しい奴を炙り出せたってことさ」


 ここまでは理解できたヒルトも、アカリの意図や考えは分からないらしく、首を傾げる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ