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「すごいねっ! さすがはウルスさんの──友達?」
「えっと……いや、友達というか……なんというか」
ぼろぼろの少女に助けられてしまった、ということも後押し、クオークは覆うかわりに顔を赤くしてみせた。
着地すると、過激にも彼を地面へと降ろし、何の気もなく伸びをする。
尻や腰を心配する程度だっただけに、憤ったりはしない──それ以上の大怪我を負っている少女に怒る資格もなかったのだが。
「渡り鳥、お前の調子はどうだ」
「まぁどうにか、かなっ? アレ、怪我をするものじゃなかったみたいだし」
自然に砕けたマナクリスタルこそが、あの場に幻影を生み出し、微弱なダメージを与えていた真犯人だった。
痛みに偽りはなくとも、負った傷に関してはたいていが嘘だ。
それでも、ティアの骨が数が圧し折れていたということが事実な時点で、十分におぞましいことだが。
血を拭い去ってみると、ウルスでさえ痣や擦り傷が残っている程度のもの。
こうして決してしまえば笑えることだが、あの場が続いていれば笑い話にはならなかった。
「さて、渡り鳥……お前はどう思う」
「えっ? ……危なかったねっ! って、話じゃないよね」
「エルズ達とオッサン達、この二つの冒険者パーティーを同時に葬ろうとしたんじゃ、ってことよ」
注釈を受け、木槌で叩くように、握った拳で開いた方の手のひらを打った。
「なるほどっ! で、そうなの?」
あまりの間抜けさに唖然としているクオーク、呆れ返る二人。彼女を知るどうかで、反応が大きく異なっている。
「ま、それが妥当な線だろうな。あのサイガーとかいう若造も、手を出さないとかいいやがったが──あれも受ける気もない要求だったってことか」
「サイガー……それって東の?」
ティアがあちこちに行き、彼女の知識を支える為に努力しているからか、エルズはあっといういまに言い当てた。
「俺を引き入れる為、だとさ。……にしても、解せないな」
頭を抱える三人──ティアは間違いなく悩んでいない──を見ながら、この場にそぐわない一人の青年は手を上げる。
「本部に赴いてみる、というのは……?」
これに関しては純粋に名案だった。
エルズ、ウルスの両名はサイガーの暴走による、本部の意向に反した結果だと判断しているのだ。
少なくとも、本部で確認を取れば間違いはない。良くも悪くも、あの眼鏡のギルドマスターとは面識があり、会うだけの地位を持っているのだから。
ただ、それをすれば相手の思う壺だ。
ウルスとしてはわざわざ出向くことになってしまい、ティア達は目的地としていた故郷から遠退くことになる。
「よしっ! 私達は行くよ!」
「えっ……ティア、でも──」
「いいの、エルズ。こっちも大事だけど、冒険者ギルドのことも心配だしっ!」
視線を上に向け、遥か彼方の里を一瞥する。「里も、無事みたいだし」
「渡り鳥がついてくるっていうなら、俺も面倒には巻き込まれなさそうだ」
この場で、今後の行動が決定した。
冒険者ギルドの真相を確かめる、その為に首都へ向かうのだと。各々の目的は違えど、行うことは同じだ。




