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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
441/1603

14r

「すごいねっ! さすがはウルスさんの──友達?」

「えっと……いや、友達というか……なんというか」


 ぼろぼろの少女に助けられてしまった、ということも後押し、クオークは覆うかわりに顔を赤くしてみせた。

 着地すると、過激にも彼を地面へと降ろし、何の気もなく伸びをする。

 尻や腰を心配する程度だっただけに、憤ったりはしない──それ以上の大怪我を負っている少女に怒る資格もなかったのだが。


「渡り鳥、お前の調子はどうだ」

「まぁどうにか、かなっ? アレ、怪我をするものじゃなかったみたいだし」


 自然に砕けたマナクリスタルこそが、あの場に幻影を生み出し、微弱なダメージを与えていた真犯人だった。

 痛みに偽りはなくとも、負った傷に関してはたいていが嘘だ。

 それでも、ティアの骨が数が圧し折れていたということが事実な時点で、十分におぞましいことだが。


 血を拭い去ってみると、ウルスでさえ痣や擦り傷が残っている程度のもの。

 こうして決してしまえば笑えることだが、あの場が続いていれば笑い話にはならなかった。


「さて、渡り鳥……お前はどう思う」

「えっ? ……危なかったねっ! って、話じゃないよね」

「エルズ達とオッサン達、この二つの冒険者パーティーを同時に葬ろうとしたんじゃ、ってことよ」


 注釈を受け、木槌で叩くように、握った拳で開いた方の手のひらを打った。


「なるほどっ! で、そうなの?」


 あまりの間抜けさに唖然としているクオーク、呆れ返る二人。彼女を知るどうかで、反応が大きく異なっている。


「ま、それが妥当な線だろうな。あのサイガーとかいう若造も、手を出さないとかいいやがったが──あれも受ける気もない要求だったってことか」

「サイガー……それって東の?」


 ティアがあちこちに行き、彼女の知識を支える為に努力しているからか、エルズはあっといういまに言い当てた。


「俺を引き入れる為、だとさ。……にしても、解せないな」


 頭を抱える三人──ティアは間違いなく悩んでいない──を見ながら、この場にそぐわない一人の青年は手を上げる。


「本部に赴いてみる、というのは……?」


 これに関しては純粋に名案だった。

 エルズ、ウルスの両名はサイガーの暴走による、本部の意向に反した結果だと判断しているのだ。

 少なくとも、本部で確認を取れば間違いはない。良くも悪くも、あの眼鏡のギルドマスターとは面識があり、会うだけの地位を持っているのだから。

 ただ、それをすれば相手の思う壺だ。

 ウルスとしてはわざわざ出向くことになってしまい、ティア達は目的地としていた故郷から遠退くことになる。


「よしっ! 私達は行くよ!」

「えっ……ティア、でも──」

「いいの、エルズ。こっちも大事だけど、冒険者ギルドのことも心配だしっ!」

 視線を上に向け、遥か彼方の里を一瞥する。「里も、無事みたいだし」

「渡り鳥がついてくるっていうなら、俺も面倒には巻き込まれなさそうだ」


 この場で、今後の行動が決定した。

 冒険者ギルドの真相を確かめる、その為に首都へ向かうのだと。各々の目的は違えど、行うことは同じだ。


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