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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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7y

 ──光の国、中部戦線……。


 魔物の勢いは弱まりつつあるが、それでも一日に一回は鈍色の瞳を持つ魔物が現れる。

 ここ一月の壮絶な猛攻を鑑みるに、状況が改善されつつある──という解釈を行うことも可能だが、実状はそこまでよくはなかった。

 この大陸に降り立つ個体は減っているが、他の個体がその分、他所に向かっているのだから。

 どうにも、魔物の最たる狙いはガルドボルグ大陸らしく、それが原因で上空を通過していくに留まっている。


 そうした変化が現れたのは約一週間前、それまでは最盛期の半数、四半数とはいえ、厄介と認識される数が襲撃を行っていた。

 彼らに情報を伝達する手段、高い知性があるという仮定を用いれば、善大王の撃破を優先しているのではないか、という点にも目が向く。

 死を前提に、相手の能力の弱点を探るべし──というのが現在の狙いなのだろうか。


 ケースト大陸の近況はこのようになっている。だからといって、全軍突撃で万事解決、ということにならないのだからなかなかに難しい。


 中部戦線──ライトロードの北部──は国家戦力が多く用いられておらず、貴族達がそれぞれに派兵している。


 今まさに羽虫の群と戦闘しているのは、中部に集結した者達だ。

 国家が直接手を貸すことがないにしろ、各貴族は宗教色の強さも影響してか、「困った時にはお互い様」の精神で助け合っている。

 他国との大きな差は善大王以下、首脳陣の構築した対魔物用戦術が完成、洗練されていることだろうか。

 言うまでもなく、全員が連携し、各個撃破を最優先に動いている。

 次点で戦力減退を防ぐことを是とした、生存重視での立ち回りだ。

 かつての最前線防衛でも犠牲がでなかったのは、時間をかけてでも安全に倒そうとしたことが起因している。

 立ち回りは教えさえすれば大陸でも運用できる策だが、危険を省みずに仲間を助けるという考えは、この国以外の倫理観では少々厳しいところがあった


 武装兵は後方支援による肉体強化を受け、行動に差し支える程度の傷を負い次第、負傷者用の陣営──羽虫が小指の爪先程度に目視できる距離──に戻って回復を受けられるという体制だ。

 そして、この陣営で従事している人物こそがアルマだった。

 彼女は数人の術者と連携し、次々と重傷者の治療に当たっている。軽傷者の治療を行っていたのは、数名の少女──かの城壁に立っていた者もいる──だった


「巫女様、お願いします」

「はぁい」


 雰囲気は変化していないが、それでも彼女の行う治療は正確で、生死を分かつような状態でさえ対処を完璧にこなしていく。

 ひどい傷口をみても、吹き出す血などを浴びても余裕を崩さない。笑みを、忘れない。


 巫女という呼称からでは、術を用いて治療しているだけのように思えることだろう。しかし、彼女はそれを行いながら、同時に外科手術を施している。

 異物──折れた武器の破片、土塊(つちくれ)など──を取り除くには、術よりもこちらの方が手っ取り早いのだ。

 小さい手に仄かな黄色の光を纏わせており、手指に血液が付着することはない。刃も導力……ということもなく、こちらは純粋な金属製を用いていた。

 肉体を強化することで回復スピードを早め、同時に菌や汚染を浄化していく。

 それらを含めて、一気に治癒できる水属性と比べると、手間が多いのは否めなかった。

 ただ、それも悪いことだけではない。

 軽度から中度の患者でも、こうした手術を行わなければならないこともある。それを子供の従事者に任せるのは、少々無理があることだろう。

 だからこそ、他国であれば医者に相当する技術を持ち合わせた看護士が、随所随所でこうした仕事を代行している。

 全体的な平均力の高さ、という点では水の国の医療を明白に突き放していた。


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