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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
391/1603

それぞれの進展

 ──光の国、ライトロード城。


 見慣れた白い天井。模様などが施されていることから、ここが病室でないことは一目瞭然だった。


「……ん、フィア?」

「わぁ! 起きた! 善大王さんが起きたぁ!」


 目覚めた善大王はすぐに気付く、目の前にいるのがアルマであることに。

 しかし、彼女が戦場にいるはずがない。そういう意味でも、状況が理解できず、ただただ困惑するばかりだった。


「善大王さん?」

「えっ? うん、どうしたんだ?」

「アルマが起こしたのになんか冷たぁい……」

「いやいや、そんなことはないぞ。確かにフィアと間違えたのはどうかと思うが……」


 想像以上に現状が気になるのか、冗談をそこそこに善大王は質問をする。


「魔物はどうなったんだ?」

「大丈夫だよぉ。みんなも戻ってきたから、大丈夫!」


 軽い状況の確認程度はできるが、仔細な情報ともなるとアルマでは不足でもあった。


「アルマが俺を治してくれたのか?」

「……う、うん。フィアちゃんに、頼まれて、ちょっと変な回復方法させちゃったけど……大丈夫だよぉ」

「それ、大丈夫なのか……」


 不安ながらも別れを告げ、そそくさと執務室に向かうと、彼の予想通りにシナヴァリアが公務を代行している様が目に映る。


「世話掛けたな。俺が代わるよ」

「いえ、しばらくは私が請け負いましょう。それよりも先に、善大王様には現状を知っていただきたい」


 頷き、善大王はソファーに腰掛けた。部屋の中は綺麗に掃除され、平時よりも整理整頓されている印象である。

 ただ、机の上に関しては異次元と見間違える程に散らかっており、紙の束や本などが適当に散らばっていた。


「おいおい、ひどい具合だな」

「戦闘の記録ですよ。この数日間はもっぱら有効な戦術の考察が主でしたから」


 この荒れ具合からはそうと思えないが、実際に国家の上位陣が集い、新たな戦術の開発が行われていたという。

 シナヴァリアは手渡しで束の一つを渡し、その後に口頭で善大王が倒れてからのことを話した。

「──ということです」

「なるほど、あの後に逃したか……」

「魔物の見逃しと帰還は私の独断です。善大王様が復帰できるのであれば、どうか裁きを」


 彼が急いていた理由はただ一つ。責任を負い、自分が消えようとも影響が出ないように尽くしたからだ。

 ただのわがままにしか聞こえないフィアの一声を受けながらも、シナヴァリアはそこまでの覚悟をしていた。


「いや、構わない。俺がいないのであれば、あの戦況を支えきれなかった。それに、犠牲者数もゼロなら上等だ」

「ですが、大陸への接触は間近。これでは連絡を行おうとも、準備が間に合うかどうかさえ」

「構わねぇよ、平和ボケの寝坊助を叩き起こすには十分だ」


 あまりにも奇妙な言葉に、シナヴァリアは困惑する。

 正確には、その奇妙さは安堵させる性質。本来の善大王が持つ、合理性を持ったセリフ。


「(フィア様が虚偽の発言をするとは思えない……だとすると、あの状況で起こした錯乱か)」


 極限状態における人間の変化、それはシナヴァリアの方が詳しい。

 気質を同じくし、実力差こそあるが、善大王は情報的強者でしかなかった。多くの人間を──仲間を葬りさってきたシナヴァリアとは違う。

 アカリの起こしたヒステリーもまた、彼が経験した範疇を越えていない。


「善大王様、あまり無理をなさらぬように」

「……ああ」


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