表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
383/1603

5t

 ──雷の国、ラグーン北東部にて……。


「敵を接近させるな! 姫様の《魔導式》の完成まで凌ぎきれ!」


 中衛から指示を送りながら、バルザックはライカの横で彼女のガードを請け負っていた。

 術者である上、姫のライカが中衛というのは異常にも見える。ただ、相手が魔物であるのだから、通常の戦術など役に立たなかった。


「行く」ライカは呟く。

「全軍撤退! 下がれええええええええええ!」


 隊長の叫びを聞き、警備兵は防御をかなぐり捨てて逃亡し始める。

 進行の邪魔をしていた兵の消失により、鈍色の瞳をした二体の魔物が進撃を開始し、羽虫は追撃とばかりに逃亡兵の背を狙った。


「《雷ノ八十八番・落雷(ライトニングストライク)》」


 トカゲ型の魔物に、魔槌の如き紫色の落雷が叩き付けれ、周囲にスパークが散らばる。

 地面を走る電撃は跳ね、隊員に攻撃しようとしていた羽虫を次々と焼き払った。

 その光景、その場面、まさに超絶にして絶景。

 灰色の空より伸びる、雷撃の柱。通常の雷とも比較できない、極太の線が分岐、蛇行しながら地面に落とされたのだ。

 仄暗い世界が舞台にでもなったかのように、光彩の舞踏が眩く照らす。

 ……ただ、それが綺麗と言えるのは傍観者の視線であり、当事者達からすれば恐怖でしかなかった。

 辺りに舞うスパークは敵味方を判別せず、容赦なく範囲内の対象に等しく猛威を振るう。

 中には背に直撃し、弾き飛ばされるもの、直撃して重体に陥る者までいる始末だ。

 それでも、ただ一度の術で状況は一変した。

 羽虫の大半が死に絶え、残る個体の半数以上が瀕死、今だ無傷なのは一割にも満たない。

 直撃を受けたトカゲ型は当然として、その真横に居たヘビ型の魔物まで消滅していた。

 味方の犠牲を考えても、ライカの影響力は凄まじい。


「残りは我々が対処いたします。姫様は南方の援護に」

「……あっそ、じゃあ任せるし」


 興味がないように、彼女は戦場に背を向けた。

 主力部隊は北東からの魔物に対処していたが、同時に南方では闇の国からの襲撃が行われている。

 対人戦を請け負っているのは防衛に特化した兵であり、悪く言えば一線級の兵とはいえない者達。

 普通に考えれば時間稼ぎの捨て駒だが……。


「(フランク、お前の力をオレは信じているぞ)」バルザックは独白する。

 

 警備軍の最高戦力にして、彼の部下。瞬時の判断能力も含め、フランクにあの場を任せるというのは最適解と言えた。

 そう、あの場──国外の人間である、アカリがいる戦場ではなおのこと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ