表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
378/1603

4x

 ──雷の国、最西端の町、《セル》にて……。


「へぇ、立派なもんだねぇ」


 アカリは水の国の港に来ていた。もちろん、土地でいえば雷の国なのだが、この場所に限っては特例的に権利が分かたれている。

 彼女が見ているのは、水の国所有の軍艦──いや、戦艦だ。

 兵を輸送することを最大の目的に定めた、光の国の船とは根幹から違う。戦闘用の艦船だ。

 超巨大な砲台を一門、通常運用されている大砲も何十問という数で配備されている。


「(こりゃ、みつかったら面倒なことになりそうだねぇ……さっさと撤収するのが吉かね)」


 今回はラグーン王直々の命令でこの地に訪れ、偵察を行いにきていた。雷の国にも偵察部隊は存在するが、アカリには遙かに及ばない。

 絵心があるわけではないが、状況判断には十分という程度に速記を進め、逃亡のメドを立てた。

 闇の国からの一方的な宣戦布告に始まり、各国が戦闘態勢には入っているが、この期に乗じた国土略奪が起きることには備えなければならない。


「進捗はどうですか」


 子供の声が聞こえた時点で、アカリは気配を消し、描写などを中断して観察に務めた。


「姫様! 予定期間以内には納めて見せます」

「(シアン姫……こんな時に来るなんて、まったく律儀なものだねぇ──あのビリビリ姫は引きこもり中だっていうのに)」


 笑みを浮かべたまま、シアンは問いかける。


「誤差は」

「一日も出しません」

「いえ、どの程度早くできますか? 可能であれば、一月(ひとつき)は巻いてください」

「一月……それは」

「そうですか。では、砲台は最低限で十分ですので、指定数の生産を終えてください」

「姫様もなかなか無理をいいなさる。数十隻を短期間で作れとは……フォルティス王でさえ言いませんでしたよ」


 数十隻という単語が出た途端、明確な脅威が現れたとばかりに、アカリの表情が曇った。


「(お姫サマが直々に……こりゃ、思ったよりもヤバイい国かもねぇ)」


 雷の国とのビジネスが行える期間はそう長くない、彼女はそう考えている。

 万が一、雷の国と水の国が戦うようなことになれば、何の迷いもなくこの場から逃げ出すと。

 逃亡への嫌悪感はない。アカリはシナヴァリアから教育を受けた、根っからの合理主義者なのだ。義で命を投げるような真似はしない。


「さてと、ささっと書き終えて報酬をもらうとしますかね」


 とはいえ、勝ち馬に乗ることもせず、仕事を達成するという方針は崩さなかった。

 そういう意味では、彼女はやはり仕事人なのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ