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食事も終え、ライカの部屋に訪れた善大王は大きなベッドに腰を掛けると、一人で寝巻きに着替えているライカの姿を窺った。
さすがは異世界流か、フィア達の使うようなネグリジェではなく、長袖長ズボンの寝巻きに着替えている。
寝巻きだというのに、トップス側にフード──羊のデザイン──が付いているのも、妙ではあった。
「雷の国の食事はどーよ! 派手ですごいっしょ?」
「まぁな、ライカはいつもあんなものを食べているのか?」
「うん、まぁいつも……城にいればいつもだし!」
一体、年の何割は城の外にいるのだろうか、と突っ込みたくなる善大王。もちろん、今は言わない。
「善大王……アタシ」
「明日の祭りはいつごろだ?」
少し恥ずかしそうにしていたライカは、気を取り直したように告げる。
「夕方から本番ね」
「そうか……明日に仕事は?」
「別に……でも、目玉イベントの前に、フィアと一緒に舞台に立つかも」
「なるほど」
問いの意図が自分といつ祭りを回るのか、ということなのだと判断し、ライカは頷いた。
「じゃあ、寝るか?」
「もう? まだ、話してない──いや、なんでもないし! 寝るし!」
善大王もバスローブのような寝巻に着替え終わっており、ベッドの中に入る。
怒りを示しながらも、好意を持ってほしいと思ってほしいライカは、なるべく怒らないようにした。
二人で一緒のベッドに入る、その行為自体奇妙なものだが、ライカの場合は子供なので何かを考えてはいない。
主照明が落とされ、部屋には周囲が最低限視認できるレベルの、淡い光が灯された。
明日が忙しくないにしても、平気で夜更かしをできるはずもなく、ライカは寝ようとした……が。
眠ろうにも、隣に善大王がいるのだから、胸の高まりがやむはずもない。
「(こんなに近くに……男が、善大王が)」
顔を真っ赤にし、湯気を吹きだしそうな勢いで恥ずかしがり始める。
「ぜ、ぜんだいおう?」
「……」
途端、善大王はゆっくりと目を開け、すばやい動きでライカを押し倒した。
あまりに早い動きだったからか、彼女は抵抗一つできず、目の前に迫った善大王にされるがままになってしまう。
「ライカ」
「へ……」
舌が回らず、唖然としていたライカだが、善大王の顔が近付いてきた途端に目を閉じた。体を許した。
次の瞬間には、彼の唇とライカの唇は重なっている。
唇、粘膜で伝わる感覚、熱に酔い、ライカは完全に抵抗の意志を失った。
ただ、この快楽に身を任せたい……そう、思ったのかもしれない。
そこで留まらず、善大王は緊張して閉口しているライカの口の中へと、強引気味に舌を押し入れた。
いつものライカであれば舌を噛み切るような真似をしたかもしれないが、今の彼女がそれをする気配はない。
あのように気が立って見えるライカも、本心では男に押し負けることを望んでいたのだろう。
蹂躙は次第に舞踏へと変わっていき、両者の唾液が粘り気を帯びてくると、善大王は自ら舌を引き抜いた。口惜しそうにするライカに気兼ねすることもなく。
善大王はライカの胸をはだけさせ、真剣な顔つき──とても美形に見える──で彼女の素肌に触れた。
「えっ……何を」
「抱くんだよ、ライカを……俺が」
ライカから寝巻をはぎ取り、二人は──。




