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大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
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9

「光の皇、主の負けだ」


 目を覚ました俺は、族長の第一声を聞いた。


「ごめんね、わたしの方が強かったみたいだね」

「なんであの一発を耐えられたんだ? いくら殺す気がなかったとはいえ、あれは動けなくなる攻撃だぞ」


 立ち上がった時点でそもそもおかしいレベルだ。ただ、そこは《風の一族》だからと整合性が合ってしまった。


「うーんとね、まぁ色々と――じゃ駄目かな?」

「駄目だ」

「フィアちゃん達の言い方にすると、わたしも巫女だから、かな?」


 巫女、という単語が出た時点で俺はどこか納得してしまった。

 巫女は六属性確認されている。そのほとんどが王族であり、建国記の時代でもその存在は認知されていた。

 力持つ巫女の影響で国が建てられている、と言っても過言ではない。だとするならば、残る風属性の巫女が居てもおかしくはない。

 人智を越えた能力を持つ存在。俺は冒険者の中で言えば最上位、善大王という立場にもついていると考えると、それに劣る気はしなかった。

 しかし、それは飽くまでも人間での物差し。戦っている最中に否が応にも知らしめられた。

 ティアは《風の一族》が持っている身体的ポテンシャルを含め、地上の誰よりも強かった。そして、その強さが人間の上限を越えていることにも気付かされた。

 俺の実力ではティアには勝てない……確実に。


「俺は帰ることにする」

「うん、じゃあ送るよ!」


 ティアに連れられるまま、俺は外界へと降りていく。日を跨ぐことになったが、それでもティアは別段何も言わなかった。

 ある時、ティアは雑談とは別の話をしてきた。


「善大王さんは強いよ。だから、落ち込まないでね」

「無理言うな、落ち込むに決まっているだろ?」


 俺は冗談のように言う。当然、本気で落ち込んでいるが。


「諦めちゃった?」

「……今の俺じゃ、ティアには勝てない」

「何度でも遊びに来てくれていいからね? で、また挑んできてよ」


 その言葉を聞き、俺は笑みで返した。


「ああ、またいつか来るよ」


 俺の実力は既に頭打ちだ。これ以上強くなることはできない、それは自負している。

 戦術でティアとの実力差を埋められるか……?

 結論が出ないまま、俺はティアと別れた。

 どうしたものか、これでは光の国に戻るに戻れない。新任だからと甘えたことを言う気にはならない上、惜しかったなどとも言えない。

 俺は静かに深呼吸をし、方針を決めた。

 馬車の調達が必要だ。とりあえずは水の国へと向おう――できるだけ、時間を掛けて光の国に戻ればいい。

 かなりマイナスな思考だったが、今はその僅かな逃避に縋らなければならない。本当に、笑える。

 そうして、俺は歩きだした。未来ではない方向へと。


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