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──それから数日が経ち……。
「善大王さん、ふーちゃん、おかえりなさい!」
いつものような眩しい笑顔で二人を出迎えるアルマ。ただ、肝心の二人は対照的な反応を示している。
「ああ、ただいまアルマ。元気にしていたか?」
「アルマはいつも元気だよぉ」
「はは、それなら良かった」
相変わらずな善大王と、申し訳なさそうであり、不満そうでもあるフィア。
気になったのか、アルマはフィアの元に近付く。
「ふーちゃん?」
「……ごめん、アルマ。ライトと結婚……結婚──けっこんできなかったよぉぉぉおおうぇええええん」
いきなり泣き出し、アルマは驚愕した。しかし、すぐにフィアを抱擁し、頭を撫でる。
「よしよし」
「やだぁああああけっこんしなきゃやだぁああああ」
「もう決着はついたはずだろ! もう駄々こねるな引きこもり娘!」
「だって、だってぇ……」
アルマは泣いているフィアを宥めながらも、懐から指輪を取り出した。
「はい、ふーちゃん」
「えっ……でも、結婚できなかったから……」
「えんげーじりんぐってのにしたらいいと思うよぉ」
「エンゲージリング……婚約指輪! やったあ! これでライトと婚約できるよ!」
「いや、できねーよ……」
呆れ気味な善大王を知ってか知らずか、フィアは元気を取り戻し、アルマにお礼をする。
「アルマ、ありがと!」
「どういたしまして」
受け取った指輪は、鏡面仕上げのシルバーリングだった。善大王でも付けられるように、デザインを考えたのだろうか──ダーインが。
流れで渋々受け取った善大王は指輪を嵌め、掌を返しながら贈り物を見つめていた。
「アルマが作ったのか?」
「うん、そうだよぉ」
「へぇ……なかなかうまいもんだな。偉いな、アルマは」
「えへへ……なでなでしてほしいなぁ」
「うむ、ではそうしよう」
善大王に撫でられ、アルマは純粋に幸福を感じていた。
フィアに気を遣えば心苦しいかもしれないが、このご褒美は彼女としても譲れなかったのだろう。




