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──ライトロード城では……。
「お腹空いたなぁ」
天の国で善大王が結婚の試練を受け始めた頃、アルマはそんなことを言っていた。
ぼけーっと外を見ていたアルマは、お菓子を食べに行こうとする。
しかし……。
「あっ、ふーちゃんからだ!」
彼女は頭に鳴り響く音に気付くが、それは通信術式ではない。どうにも、《星》での回線を使っているようだ。
強制介入ができるが、フィアは気遣いを覚え、きちんと事前に通知を送るようにしている。
それで気にする《星》ではないものの、主にミネアやライカからすれば都合がいいことだろう。
「はぁーい!」
『……あっ、アルマ? 今大丈夫?』
「うん、大丈夫だよぉ」
確認を取ると、急にフィアの声は小さくなった。
『ねぇ、アルマ。指輪作ってくれない?』
「えっ? なんでぇ?」
『ライトと結婚するのよっ! お父様に頼んだら、ライトが試練を受けてくれることになったの。で、よゆーで合格してるから、今の内に作っておきたいなぁって』
善大王が了承していない──当人が勘違いしている──状態で指輪を欲するなど、性根は元の通りなのだろう。
ただ、アルマが彫金を得意とするか、と言われると──そうではない。
「うんっ! いいよぉ」
『ありがと! じゃあ、お願いね』
「わかったよぉ」
完全な、安請け合いだった。
ただ、同じ頭空っぽのフィアと比べ、アルマは何も考えていないわけでもない。
「せっかくなら、なにかおまじないをしておこうかなぁ」
弱そうに見えるアルマだが、彼女も歴とした《星》。得意分野も存在している。
彼女が好んでいるのは、封印系統の術。《救世》や《魔封》などが頂点に位置するに術体系だ。
そもそも、彼女が封印術を取得することになったのは、先代善大王が原因なのだ。
「どんなおまじないがいいかなぁ」
アルマはアルマなりに真剣に、親友の為になにかをしよう、と考えているらしい。
《魔導式》の構想を練りながら、過去に想いを馳せる。
彼女は決まって、こうしていた。封印術を作り出す時、現代に流れるイマジネーションだけではなく、それ以外の要因を捉えている。
ただ、それは技巧というわけではなかった。
ハーフエルフとして持った、天性の直感というべきか。情景を思い浮かべ、感じた気持ちや想いだけで、自然と《魔導式》が構成されていく。
努力を知らない天才が、歌や詩を自然と思いつくように。
巡りし思いは友への祝福。善大王への激励。そして──先代善大王とも、楽しかった記憶。




