18
白馬に乗り、フィアを連れ去っていく善大王。
追手は一人も現れず、安心して速度を落とすと、フィアが声をかけてきた。
「ねぇ、ライト。本当に信じていいの?」
「ああ、いつか……いつかは結婚してやるよ」
これは善大王が思考に混じらせていた言葉だった。
フィアはこれを信じ、今する必要がないという善大王を選ぶことになった。
「それで、どうだった」
「うん。みんな、少しは私の笑顔を良いって思ってくれたみたい」
「そりゃ、何千何万って幼女を見てきた俺が、特に可愛いと思ったくらいだ。誇っていいぞ」
「……なんか、いやな誉められ方だなぁ」
釈然としなさそうなフィアに「気のせい、気のせい」と言い聞かせ、善大王は手綱を強く握る。
「それにしても、あんなことしても良かったのかな」
「……あとで、フィアから謝っておいてくれ」
「なんか無責任かも……でも、お父様も手を打ってくれていたみたいだから、たぶん大丈夫だと思うよ」
知った上で、善大王を試し、フィアは聞いていたようだ。
ただ、そんなことだけで嫌いになるフィアでもなく、善大王の背中を抱きしめる。
「ライト、大っ好き!」
「ああ、俺もだ」
正直な二人は、自分の想いを隠すこともなく告げ、光の国──の前に、馬車を調達できる町を求めて走りだした。
「(それにしても……あの男の言っていた、知らない組織とは何のことなんだ)」
不意に過ぎった疑問について考えながらも、善大王は今ある現実を楽しむことにした。




