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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
252/1603

7

「最後の試練は?」


 これに関してはフィアも知らないらしく、善大王は素直に問いを投げかけた。

 最終試練は天の国、現国王が決める。だからこそ、その場その場で対策を打つという浅はかな手は粉砕ができるのだ。

 恋愛結婚になろうとも、ここで天の国としての政治的な攻撃が可能になる。ただ、それを突破してしまえば関係はないのだが。


「最終試練は、フィアを伴っての任務だ」

「任務……?」

「水の国から報告が来ている。このケースト大陸、それも天の国の領土内に犯罪者が逃げ込んだ──とのことだ」

「こちらにはそのような報告は来ていないが? 近日の話にしても、急ではないか?」

「水の国の都合は知らない。だが、事実だ」


 水の国という表現から、発令者は間違いなくフォルティス王、もしくは国に関わる人間だ。


「(だとすると、出したのはフォルティス王か? 俺に恩をつけたくはなかったんだろうな)」

 一人で納得し、善大王は問い返す。「それで、その犯罪者を捕らえればいいのか?」

「そうだ」

「俺一人でも構わないが?」

「それでは困る。フィアを伴侶とする者ならば、守りぬけるだけの実力を示す必要がある」


 フィアの実力は折り紙付き。むしろ、善大王が必要とならない、ということも簡単に想定できた。

 極端な話、善大王は少女の心理を読みとおす力があるからこそフィアを御することが可能だが、それでも回避不能の広範囲攻撃を受ければ一撃だ。

 言うなれば、実力はフィアの方が圧倒的に上。国家防衛機構となっている存在の本領発揮か。


「分かった。犯人の特徴などは」

「全情報をそちらに提供する。天の国としては位置も特定できている為、いつでも討伐にいける体勢だった」


 一見するに、水の国の問題かのように思われる──実際、そのとおりだ。

 ただ、だとしても軍を出兵することはできない。仮にも他国領土内である為、大きな動きで手を出すのは、それこそ宣戦布告にも等しい行為にも思われるのだ。

 ただ、前述のとおり《星》の加護が存在しているからには、そのようなことはありえない。

 ありえないが、最悪の場合を想定した協定こそが、まさにこの方式なのだ。他国に逃げた犯罪者は、その国に対処を任せる。

 高い報奨金を支払う必要もある上、他国からの申請があれば応じなければならないなど、面倒な問題も多く存在していた。

 だからこそ、大抵は自国で処理することを暗黙の了解としている。簡単な犯罪者であれば、冒険者を登用することも可能。

 少なくとも、現状がそうでないことから推理することができるが、この事件は簡単なものではない。


「犯人は何をやらかした?」

「カルトゥーチェの首輪を奪い取った。事件がどれほど深刻かは、これで理解してくれたか?」

「……それで、フィアを連れて行けというのか?」

「守り切れれば関係はなかろう」


 親馬鹿らしからぬビフレスト王の態度に、善大王は怒りというよりかは、困惑していた。

 カルトゥーチェの首輪。それは初代フォルティス王の時代に使われていたという、《星》をも洗脳する道具だ。

 《魔導式》も存在しない旧時代で、かつ現代ですら実現していない《星》への精神介入という二つの偉業を成していることから、この道具は各国で恐れられている。

 何かしらの方法で首輪さえつけてしまえば、それだけで《星》が手駒になるとすれば、それは世界のバランスを崩壊させることに繋がるのだ。

 なればこそ、今回は《星》以外だけで行くのが定石。最悪、誰かが洗脳されようとも、その人間毎首輪を消し去れば、大事には至らない。

 しかし……もしもフィアが洗脳されるようなことになれば、おそらく破壊すら困難になることだろう。


「受けれぬというのであれば、こちらから魔道二課を出す。同時に、婚礼の儀も最後の最後で失敗に終わるが」

「わかった。フィアを連れて行く」

「ならばよい」


 善大王としては不満が多かったが、それでも事件の危険性を第一に考え、自分が解決する方法を選んだ。

 人間不信というわけではないにしろ、自分で行うほうが確実という考えは、彼の中に確固として存在している。

 そしてなにより、解決のついでに試練の突破もついてくるのだ。断る理由がない。

 問題はフィアの安全を確保しなければならない、というところ。もし万が一、操られるようなことになれば、対処に負えるかすら不明。


「……ま、やってみればわかるか」

「ライト、頑張ろうね」

「フィアはあんまり近づかないでもらえるか?」

「えっ……ライトひどい」


 二人の関係を鑑みるに、善大王はフィアならばこれだけで通じると思い、発したらしい。

 ただ、フィアからすれば、善大王の嫌がる結婚を強行したという後ろめたさがあるからか、思った以上に落ち込んでしまった。


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