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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
250/1603

5

「ライトっ!」

「おっ、終わったか」


 扉を開けた途端、すぐに抱き付いてきたフィアを、これまた神掛かりな読みで受け止めた。


「何を話していたんだ?」

「えっとね……」

「それは、私から話そう」

 鋭い眼光を向け、ビフレスト王は告げる。「フィアに、ついてだ」

「フィア……について」


 不吉な問いに対し、善大王は僅かながらに疑念を抱いた。よくない結果を、予測したのだ。


「(フィアを連れ出すのは今日まで、ということか? いや、だとすればフィアが暗い様子になっているはず……俺への依存も完全には消え切っていないのも、間違いない)」

「天の国の儀式については、知っているか?」

「知らないのだが」


 思考をめぐらせている最中だった為か、浅い質問だったこともあり、軽く流す。


「他国の文化について、少なからずは見聞を深めておくことだ」

「何の儀式かを言ってもらわないと、全部言うことになるが?」


 威圧されたとしても平然と言い返せる辺り、善大王は王としての肝が据わっているようだ。


「婚礼の儀だ」

「婚礼……? 一月程はかかる試練の連続、ということ程度は」

「十分だ」

「……婚礼。それは、天の国──フィアを狙った貴族と?」


 もちろん、結婚する気などない善大王からすれば、この唐突な問いは混乱を生むものでしかなかった。

 フィアはもう結婚する時が来ており、その婚礼の儀を突破した者がいるからこそ、外出許可はここまで──という風に解釈することも可能だ。

 もちろん、フィアが結婚を急かしてきたのも、そこに繋がってくると推理できる。


「天の国を狙っているかどうかは知らん。ただ、傲慢にもフィアを嫁に取ろうとしている」

「なるほど」


 善大王はさらに推理を巡らせる。


「(あのビフレスト王が断ろうとしていない辺り、天の国の中核貴族か? いや、儀式のことを言ってきたからには、文化的拘束力が強いのかもしれないな)」

「善大王には、この婚礼の儀を受けてもらう。構わないな」

「……分かった。天の国への義として応じよう」


 怪訝そうな顔をするビフレスト王を見て、疑問に思いながらも、善大王はもう一度頷く。


「詳しい日程は後で伝える。宰相にも伝えておけ」


 去り往くビフレスト王を見送ると、フィアが近付いてきた。


「ライト、ありがと」

「困った時はお互い様だ。それに、天の国へ恩を売ることができるかもしれない」

「そう……なの?」

「ああ、夢が詰め込めそうなくらいに、頭空っぽなフィアには分からないかもしれないがな。とりあえず、俺はその婚礼の義を受ける──そして、なるべく早く終わらせる」

「ライトかっこいい!」

「それほどでもない」


 若干決めが入っている善大王に対し、フィアは首を傾げる。


「ねぇねぇ。夢が詰め込めるっていいこと?」

「ああ」

「頭空っぽって? これ馬鹿ってことだよね?」

「……」


 じっ、とした目で見てくるフィアに、善大王は鼻で笑いながら笑みをこぼす。


「そういうアホっぽいところが可愛いんだよな、フィアは」


 恰も愛玩動物に接するかの如く、髪をくしゃくしゃに撫で、ぎゅっと抱き締めた。

 フィアとしてはかなり不服な扱いなのだが、愛されていることを実感し、彼に抱き付き返す。


「ライトだいすきっ」

「俺も好きだ。フィア」

「でも、頭空っぽって言ったよね」

「……最近は目ざとくなったなぁ。昔は色惚けお姫様だったから簡単だったのにな」

「なんか、また馬鹿にされてる気がする」

「さて、とりあえず日程の情報提供を頼む。どうせ、試練を突破する毎に次の、次の、と続くだろうしな……さっさと情報収集だ」


 詳しい試練内容については重大機密扱いにされているので、いくら物知りの善大王でもしらないようだ。


「うん! そうときたら、予習復習だね」

「復習じゃないがな……」


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