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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
238/1603

19

 ──冒険者ギルド、監獄内……。


 呆然としていたティアは、鳴り響く耳障りな音に気づいた。

 通信術式が届かないはず、という常識は覆されている。《星》が持つ能力によって。

 しかし、すぐにそれが通信術式だと気づく。


「(なんで、届くの……?)」


 ティアは疑問に思い、通信に応じた。


『……ティア? ティアよね?』


 その声は、ミネアのものだった。


「ミネア?」

『そうよ。フィアに頼まれたから……じゃない! ティアが心配だからかけたのよ』

「……そうなんだ。ありがとう」

『えっと……あーもう! 後悔なんてしていられない! あたしが出ていてもあれだから、すぐに変わるわ』

「誰に……?」


 返事はなかった。

 次の瞬間、ティアの瞳に光が宿る。


『……クク、俺だ』

「えっ……その声、がむらん?」

『その名で呼ぶな。この俺こそ、《魔轟風の使い手》、ガムラオルスだ』


 ある時に山を出て行って以降、ガムラオルスとは会っていなかった。

 しかし、この変化は明らかに変だと気づき、ティアは疑問を抱く。


『何馬鹿なことやってるのよ! ティアも困ってるじゃない!』

『うるさい、小娘が。この俺の崇高な名を穢されては困るからな』

『何が崇高な名、よ! ティアが付けてくれた名前じゃない!』

『黙れ小娘! この二つ名は《魔轟風》の──』


 声の裏から爆撃音が聞こえ、ティアはびくんと体を震わせた。


『……ほら、早く』


 小さくも、明らかに威圧しているような声が聞こえてくる。


『…………俺だ』

「う、うん」

『貴様と俺は、同じく彼の地より地上に降りた者。汚濁の地においてもなお、同じ魂を持つ者だ──貴様が助けを求めるというのであれば、手を貸してやらんでもない……それだけだ』

「それって……」

『では、さらばだ。いずれ会おう』

『ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! 何勝手に満足してるのよ!』


 複数回の爆破音が聞こえてくるが、ティアは笑い出していた。


『ティア、ごめん……ガムラオルスは──って、どうしたの?』

「えっ? あはは、何でもないよ。ただ、二人とも楽しそうだなぁって」

『楽しくなんて……あんな馬鹿──じゃなくて、ガムラオルスは迷惑ばかり……でもなく』

「いいの。久しぶりにガムランと話せて楽しかったよ」

『そ、そう?』

「うんっ……本当に、ありがとう」


 ティアはそう言い、通信を切った。

 一度は消えた瞳に、光は宿り続けている。消えかけたものが、再び息を吹き返しつつあった。


「ガムラン、また……会いたいなぁ」


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