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──雷の国、港前マーケットにて。
「えっ? 港の使用許可? それなら別にいーけどさ」
『本当?』
「たぶん。定期船の時間に噛まなければいいとおもーよ」
『えっと……その日の昼から、二日間は泊めておきたいんだけど』
ライカはなめていた棒付きキャンディーを吐きだした。
「え? ちょっとタンマ、そっちは軍艦っつたよね? それを二日間も泊めるってなると」
『うん。貸切ってことになるけど、どうにかならない?』
いくらフィアでも、この頼みが正気でないことは理解している。
定期船は貴族も利用することもあり、雷の国では突出した権威を持っているのだ。
それだけならばともかく、港全体を貸切にするともなれば、民間の船や魚介類を取る漁船なども止まることになる。
軍艦のサイズを考えれば、実質貸切は免れない。雷の国に与える経済損出は凄まじいものとなるだろう。
「どうにかっつたって。こりゃアタシだけで決めるのはちょっとーってカンジかな」
『そこをなんとか! ティアの命がかかってるの』
「それは聞いたけどさー……」
『光の国は損害の補填もするから! それに──いや、こっちはどうでもいいんだけど、光の国も大規模に特産物を持っていくから』
ライカの目が輝いた。もちろん、損害の補填などという、自分に関係のないところではない。
「特産物? もしかして、お菓子とかある?」
『えっ、それはまぁ……あると思うけど』
「わかった! じゃあ受けたげる。なんっつたってティアの、仲間の為だかんね」
『ライカぁ』
仲間に対する思いがないとは思わないが、彼女に関しては自分の欲求の方が強そうに思えた。
『じゃあ、《嵐の海域》についてもお願い』
「任せといて」
《天の星》を起点にした、《星》の繋がりを用いる作戦は、次第に進んでいく。




