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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
236/1603

18γ

 ──水の国、フォルティス城の一室。


「……カイト、席を外してください」

「ん? どうかしたの?」

「いえ、呼び出しが来たので」

「呼び出し……ああ、あの通信術式ってやつね。オーケーオーケー。携帯の盗み聞きなんて悪趣味なことはしないよ」


 カイトは笑みを浮かべながら部屋を出て行った

 

「はい、シアンです」

『シアン。事情は分かっている?』


 主語もなにもない、完全に唐突な発言。

 碌に人と話さず、絵本ばかり読んでいた引きこもり姫らしい言葉なのだが、この場ではそれでも十分に通じる。


「ティアちゃんのことですか?」

『そう。冒険者ギルドの本部はそっちでしょ?』

「はい。ですが、冒険者ギルドは国家が関与していない組織なので、こちらからは……」


 それこそが今回の事件の──冒険者ギルドそのものの問題でもある。

 ただ、フィアはそこを見ていなかった。


『いや、そうじゃないの。ライトが動いてくれるって言ったから、シアンにはその手伝いをしてほしいの』

「手伝い?」

『うん。ライトは、光の国の軍艦で水の国──ガルドボルグ大陸に向かうらしいの』


 軍艦、という物騒な単語の登場に、シアンはただでさえ小さい心臓──もちろん物理的に小さいわけではない──を跳ねらせた。


「戦争をするつもりですか?」

『違うの。定期船じゃ処刑の日にまで間に合わないから、出すことにしたの』


 定期船は名のとおり定期的に巡航しているので、都合に合わせて動いてはくれない。

 貴族もその例にあふれない。都合では呼べないが、下賤な民と席を共にしない為に、リッチメン用の座席を取るくらいのもの。

 そのルートすら、闇の国を経由して雷の国、という遠回りを挟むので比較的時間がかかる。

 それ故、善大王は未だかつてないショートカットを決行しようとしていた。

 元来、この闇の国経由の移動方法は初代フォルティス王の時代──新大陸発見の時代にまで遡る。

 光の国のあるケースト大陸から火の国の海岸まで、この範疇には《嵐の海域》というという危険海域が存在しており、侵入が不可能。

 もちろん、それはシアンも承知している。


「近道など存在しないはずですが──」

「水の国、そこに詳しい資料が残っていると思うの。世界で初めて大陸間の航海をした国が、今の今まで何も調べなかった、ということはないでしょ?」


 フィアの発言は世界を覗いているので、事実だ。

 現在こそ海に面していない水の国だが、雷の国の始祖の時代からある決まりごとが存在している。

 それは、水の国が海洋調査を行える権利。別の地点にある港を使う権利を永続的に持ち続けること。

 船や港は一応、雷の国所有になっているが、特例として水の国も権利を持っている。

 雷の国が独自に集めた情報、水の国の集めた情報、それらを総合すれば確定的な《嵐の海域》の範疇を絞ることができるのだ。

 そうなれば、闇の国を経由するという安定を取らず、海域に入る寸前の場所を移動して近道ができる。


「……できる限りの最大、ですか」


 シアンはフィアの──実際は善大王とシナヴァリアが考えたのだが──考えを読み、納得した。


「わかりました。こちらの情報はすぐに送ります……ティアちゃんを、助けてあげてください」

『任せて。天の星として、仲間は絶対に助けて見せるから』


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