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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
205/1603

20β

「起きたのね」

「……情けない話だけどね」とフィア。

「あの状態から復活、本当に化け物じみているわ」

「ええ、自覚している」


 《星》はそもそも、人類種とは根本的に違った存在ともいえる。

 周囲にマナが存在していれば、それを吸収して自動的に肉体を修復することができるのだから。事実上、自分の管轄内であれば《星》は死なない。

 実際、敗北の一歩手前までいったティアも、こうした能力で自己再生していた。勝負の最中は礼儀として発動していなかったらしいが。

 しかし、エルズは思った以上に驚いていない。今の彼女は、それ以上におかしなものをみているから、だろう。


「攻撃しないの?」

「ええ、だってライトが戦っているんだから。私の戦いは終わったから、あとはライトの戦いよ」

「……馬鹿みたい」

「ええ、馬鹿よ。親馬鹿よ……ライトも、私も」


 自信満々に、恥じる様子も見せずに言うものだから、エルズも笑えずに無表情の反応を示す。


「なんで、あんな馬鹿なことをしているのかしら」

「分からない? ライトは私と同じで、アイを救おうとしているのよ。大事な、大事な娘だから」


 軽く笑い、エルズは黒い闇の空間の方へと目を向ける。


「どうして、あなたはあの男のことを信用できるの? あのようなことをされて」

「アイがそう言ってくれているから」

「は?」

「ライトはきっと、アイを試していたんだと思う。もしも、私があんな目にあっても何も思わない、根っからの悪人だったら──たぶん、ライトもこんなことはしなかったと思う」


 フィアの読みは当たっていた。善大王はエルズが自分を狙う刺客だと、はじめから分かっていた。

 明確に判断がついたのが誕生日の時。ただ、なんとなく感づいていた程度ともなれば、出会いの日からだろう。

 記憶を失っている間は素直に楽しみ、記憶を取り戻してからは、アイという面が本当に偽者なのかを探った。

 結果から言うに、エルズの根は決して腐ってはいない。それが分かった時点で、善大王は救うべきだと理解した。


「くだらない話ね」

「でも、私はそんなライトが好き」

「……その善大王は、もう死ぬわ」

「ううん、絶対死なない。ライトはきっと、アイに言ったような宣言を成功させて、戻ってくるから」


 馬鹿正直に信じているフィアをみて、エルズは眩しさを覚えた。

 夜明けはまだ遠い。太陽も、今はまだ姿を隠している。

 目を軽く擦り、地面に座りこんだエルズは善大王の様子を探り出した。


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