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大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
20/1603

6

 アカリの背後からは魔力が感じられる。

 導力の精製、術の発動、それらの際に副次的に放出される力、それが魔力。

 これを判断できれば相手の攻撃気配などを察知できるわけだが、俺クラスになれば術の規模まで判断することも可能。

 おそらくは中級、人間を葬り去るには十分すぎる火力だ。


「消えるんだよ、変態野郎! 《火ノ六十番・火柱(ファイアライズ)》」

「《光ノ五十五番・日壁(ソーラーウォール)》」


 火柱がこちらに向かってくるが、俺の発生させた光の壁がそれを打ち消した。

 術の規模、防御能力などを考えればこちらの方が下だ。しかし、相手の術の威力が拡大しきる前であれば、打ち消すことも可能。

 いわゆるジャストガード、俺でも成功確率は八割程度だ。


「あたしの攻撃を低順列で防いだ? ……あり得ない、偶然が何度も続くと思うんじゃないよ!」


 《魔導式》の展開に合わせ、俺も刻んでいく。

 相手は中級の練度をあげているらしく、俺よりも組み上げていく速度が早い。また、少し遅れるか。


「今度はどうするんだい!? 《火ノ六十番・火柱(ファイアライズ)》」

「《光ノ五十五番・日壁(ソーラーウォール)》」


 再度ジャストガードを決め、術を打ち消す。


「大人しく退散してくれないか? 俺は今、お姫様とお楽しみ中なんだよ」

「くっ……《選ばれし三柱(トリニティア)》のあたしに……」


 《選ばれし三柱(トリニティア)》……一体何のことだろうか。いや、幼女以外の奴に興味を持つだけ無駄か。


「俺はライカちゃんを城に連れていく。それで満足だろ?」

「犯罪者を逃すと思う? こうなったら、本気で潰す」


 アカリから強い殺気を感じた。それと同時に、凄まじい魔力が放出され、空中に赤い《魔導式》が刻まれていく。

 規模が上級――それも二百番台クラスだ。この一区画毎焼き払う気か。

 咄嗟に《魔導式》を展開し、術発動の妨害を行おうとするが、アカリは同時並行で別の《魔導式》を構築し、こちらの術を相殺してくる。

 このアカリとかいう女、術者としてはかなりの使い手だ。俺が知る限りの人間で言っても、上位に入ってくる。

 俺の《魔導式》展開はかなりの速度のはずだが、アカリは上級術規模を展開しながらも、こちらの速度についてきている。

 これ以上長引くと厄介か。くそ、奥の手を使うしかないな。

 対抗するように、俺も《魔導式》の同時展開に移行する。速度自体は落ちてくるが、それでも手数は数倍に膨れ上がった。

 防御に足を回さずに済むからか、アカリの上級術は完成に近づいてしまうが、これでこちらも結界を張ったのも同然だ。


「防ぎきれないだろ? 大人しく《魔導式》を停止しろ」

「あんた馬鹿かい? あたしの《魔導式》はあと数秒あれば完成する。こっちにそのしょぼいのを当てられても、あたしの上級術を止めることはできないねぇ」

「……だろうな、俺の手は読まれていると思った。だが、本気でやりあうなら――俺もお前を殺すことになるぞ」


 アカリは鼻で笑い、《魔導式》を完成させた。


「《火ノ二百番・火炎(トレメンダス)――》」


 すっ、とライカが俺達の真ん中に入り、アカリを睨む。


「一般人相手に力を使うのは見逃せないわね」

「なっ……その変態を倒してあげようとしたんじゃない! 感謝して欲しいところだよ、まったく」

「確かに、この善大王はとても変態な男だけど、それでも――」


 どうやら、ライカちゃんは俺のことも怒っているらしい。


「善大王……へぇ、その格好どっかで見たと思ったら、そうかい。なら、一般人じゃないねぇ」

「今日は大人しく退きなさいよ。これは命令よ」

「……ハッ、ちびっこ姫様の癖に命令ねぇ。まっ、それもいいけどさ」

 発動寸前の《魔導式》を停止すると、アカリは「命拾いしたねぇ」と言い残し、去っていった。


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