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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
199/1603

15

 アイは深夜に目を覚まし、善大王の体を揺する。

 善大王は眠り、目覚める様子はなかった。

 口許を緩め、アイは寝巻きの薄いワンピースをひと撫でし、善大王の上に跨る。

 彼女の目的は、厄介なフィアの排除だ。もしも善大王が娘を襲うような屑人間であるとすれば、フィアも見放すかもしれないと考えている。

 じっと沈黙し、しばらく乗っていると、アイはそろそろ気づかれないと動き出そうとした。

 しかし、何をして善大王の(・・・・)は目覚めることもなく、本人も眠ったまま。


「なんで」

「そりゃ、アイが娘だからな」


 驚き、ベッドから落ちたアイを心配し、善大王は手を差し伸べる。


「大丈夫か?」

「う、うん」

「夜更かしは父として見逃せないな。早く寝ろよ?」

「分かったよ」


 状況について深く追求することもなく、善大王は再度目を閉じた。

 気づいているのか、気づいていないのか──彼を知っている者であれば迷うところだ。ただ、アイに限ってはその選択肢は出現しない。


「(察しが悪いみたいだけど……こっちも運が悪いわね)」


 翌日、家に戻ってきた二人を心配そうな目で見つめたのは、包丁とフライパンを構えていたフィアだった。


「料理中……じゃないよな?」

「不審者かと思って」

「いや、その装備じゃ無理だろ」


 そう言われて怒ったのか、目に付いた岩に向かって斬撃を放つ。

 どうしたことか、岩は綺麗に切断され、包丁も真っ二つに折れた。


「わぁあああ! ママすごい!」

「へへん、どうよ!」

「なんてことだ……」


 自信満々に胸を張ったフィアの頭に拳骨を放つと、善大王は「いや、包丁を壊すなよ」と冷静な指摘をする。

 普通に考えればそうなのだが、包丁で岩を両断するという明らかに異常な現象に触れない辺り、善大王もできる技術なのだろうか。


「それで、どこ行ってたの?」

「えっ? オキシーだが」

「そんな遠くまで行ったんだ……へぇ」


 疑惑の目を向けられるが、善大王は後ろめたい部分がないので平然としている。


「それで、プレゼントは?」


 楽しみらしく、フィアは明らかに期待しているといった様子で二人を見た。


「はい、これ」

「わぁ、ありがとう!」


 受け取ったのは、棒つきのキャンディー一個だけ。誰がどう見てもサプライズプレゼントには程遠いのだが、フィアは普通に喜んでいる。

 それも分からないでもない。サプライズとはいえ、アイと違って誕生日ではないのだ。

 しかし、だとすればあのような場所まで移動するのに掛かった費用は、このキャンディー一個だけのものだったというのか。


「でも、買いにいくなら一緒に行きたかったなぁ」

「今度は一緒に行こうね」

「ええ、そうね」


 一見微笑ましく見える二人を認めながらも、善大王は何か釈然としない様子で書斎へと戻った。


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