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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
192/1603

「どこにいくのお?」

「近くの村よ。かなり小さいから村って気もしないけど」


 フィアが能力を使って調べ上げた情報だが、どうにも人口は十人、数組の家族が集合した村だ。

 一応は貨幣経済を利用しており、旅の冒険者が宿泊、商品を購入をする施設も少なからず用意されていた。

 小さな店先に並んだいろんな花──ではなく、いろいろな果実などを二人は眺める。

 果樹園があるような村ではない──一応十数本は生えているが──為か、果実の大半は近くの森で取れるものだ。実質原価ゼロだとしても、旅人からすれば食料の調達は命綱となる。

 もちろん、主産物である麦などの穀物も豊富に取り揃えられており、フィアはすぐにそちらへと注意を向けた。


「わぁあ! おいしそ」

「(カボチャとトウモロコシを買って、スープにでもしようかしら。外で焚き火して、そこで焼き野菜にして食べるのもいいわね)」


 調理スキルを手に入れたからか、フィアの目線は主婦のそれに近付いている。

 果実に魅力を覚えてはいるのだが、どうにもそれ以上に料理の方が気になるようだ。


「お嬢ちゃん達は姉妹かい?」老婆は問う。

「いえ……」

「ママ! わたしアイ!」


 ママと言った時点でフィアを指し、老婆は困惑した。

 すぐにままごとの延長と判断し、優しい笑みを浮かべてから赤い果実を二つ差し出す。


「食べてごらん、おいしいよ」

「わーい! ありがとー!」


 手を伸ばしたアイの肩を叩いてから静止を促し、フィアは注意するようにアイの目を見た。


「こういうのは御代を払ってからもらうの」

「おだい?」

「お金の──これのこと」


 手に持った銀貨を見せると、アイは納得したように頷き、フィアの手からそれをひったくる。


「おばあさん、はい!」

「いや、いいんだよ。こんなところまで来てくれたんだから、サービスさ」

「え? いいの? やったあ!」


 さっさとりんごを受け取ったアイは喜んで食し始める。

 フィアはそれに続いて、会釈してから受け取り、齧りついた。


「おいしー!」

「うん、おいしい」


 りんごを食べ終えると、フィアは購入品を指定していき、最後にはアイに支払いを行わせる。

 初めての行動なだけに、アイはそれだけで楽しそうにし、大きめのトウモロコシ四つを受け取って胸に抱えた。

 カボチャや果実類を背嚢いっぱい──子供の体格には少し大きすぎる──に詰め、フィアが背負うことになって買い物は終わる。

 コアルとの修行の結果か、かなり重いはずの荷物も苦もなく背負い、フィアは手を引いてアイと共に帰路についた。

 ずいぶんあっさりしているように見えるが、この村を訪れることは決して少なくない。それを分かっていたからこそ、散策の楽しみを敢えて取っていたのだ。

 帰り道の最中、アイはフィアに語りかける。


「パパなにしてるかなぁ」

「さぁ、昼寝でもしてるんじゃない? さすがにこんなところじゃ外で遊べないだろうし」

「遊べないなんて、パパいやじゃないかな?」

「いやだと思うけど、ママからすればその方がいいかも」


 アイは知らない。フィアの言う遊び(、 、)が幼い少女との肉体的な交わりであることを。

 もちろん、フィアとしても教える気はない。フィアとしても、知りたくはなかったのだから。

 さて、親として回答したはいいものの、彼女も善大王が何をしているのかが気になりだす。


「(家事──はほとんど片付けてたし、農業するとは思えないし……一人で変なことしてないといいけど)」


 善大王が欲望の発散を一人ですることは少ない。というよりも、ほとんどない。

 ただ、まったくないと断言できるほど少ないわけでもなく、そんな場面に出くわすかもしれないという懸念が生まれていた。

 到着したらノックしよう。そう考え、フィアは心配しながらも歩みを進める。


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