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「はぁ……はぁ……逃げ切ったぁ」
「誰から?」
「それは父さんから……って!」
ライカの後ろに立った俺は彼女の頭を撫でた。
「お父さんも心配してたし、帰った方がいいよ」
「勝手に撫でんなー! にゃああああ!」
抵抗してくるが、そんな軽い攻撃を予見できない俺ではなく、全てを軽く避けていく。
「帰るのが嫌なら、俺と遊んでいく?」
「えっ……なにか付き合ってくれるの? ハッ、つまらなそうだけど、いいわ、付き合ってあげる」
「ほう、ならお言葉に甘えて……」
俺は静かに屈みこみ、ライカに口づけを交わそうとした。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! 何しているのよ!」
「えっ? 大人のスキンシップさ」
「あ、遊びっていったじゃない! キスなんて、そんなこと……」
「こんなことでも、楽しめるぜ?」
再びキスを使用とした時、俺の首筋に白い雷撃が掠った。
「や……やめなさい! 次やったら撃ち抜くわよ」
「ウブな子だね。大丈夫、気持ちよくしてあげるから」
ライカちゃんは俺の体を蹴りつけると、そのまま逃げていった。
「あーあ、逃げられちゃったか。よし、気付かれない程度に遊ぶか」
シナヴァリアと約束した。王族を襲ったりはしないと。
だが、キスくらいならばノーカウントだろう。うん、一発やるのはどうかと思うが、たかがキスくらいなら気にするまでもない。
意気揚々と歩きだし、俺はライカちゃんを追う。
安心するライカちゃんを発見する度に背後から話しかけ、雷撃を受けては逃げられ、また追いついては逃げられを繰り返す。
ガードの硬い子というのは、それはそれでそそられる。やはり、男としては困難を越えてから手に入る幸せの方が美しく見えるのだ。
そして、ついにライカちゃんは行き止まりで立ち止まった。
「いき……止まり?」
「やっ、ライカちゃん。そろそろキスしてくれないかな?」
「き、キス魔! 変態! やめなさい!」
「大丈夫、すぐに好きになるからさ」
素早い動作でライカちゃんの唇を奪いとると、そのまま舌を入れた。
「むごっ……むっ……やめ……」
抱擁し、気持ちよくなるように舌を愛撫していくと、ライカちゃんは次第に抵抗する意志をなくしていく。
俺は幾多の幼女と遊んできた。だからこそ、こっちの技術に関してはトップクラスと自負している。
俺ならば、愛撫だけでも十分絶頂させることができる。
よし、あと少しだ、と盛り上がりかけた瞬間……背後から強い魔力を感じた。
とろけ顔になったライカを寝かせると、俺は振り返り《魔導式》を展開する。
「お前は誰だ?」
腕に紅色をした腕輪を付けた、赤いツインテールに茜色の瞳をした女。
……年は十六才、くらいか? 残念ながら幼女以外には興味がないので判定しきれない。
「あたしはアカリ、お姫様を襲うような不届きな奴を始末するのが仕事さ――あんた、まさか」
「ほう、なら安心してくれ。俺はラグーン王に頼まれて彼女を捕まえているだけだ」
「なっ、嘘をつくんじゃないよ! 今、キスしていたじゃないか!」
「紳士と淑女の挨拶だ。別に俺がライカちゃんを襲っていたわけではない」
「し、信じられないねぇ。とりあえず、倒させてもらうよ!」




