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収容施設は城の地下にあるらしく、鍵で閉じられた扉を開け、階段を下っていく。
長い階段だった。一体、どれだけ地下深くに閉じこめているのだろうか。
しばらく歩くと、ようやくゴールが見えてきた。しかし……。
「明るいな」
「ええ、超常能力者達が暮らしに不便しないように心がけていますから」
最後の扉を開けると、そこには地上を写したかのような光景が広がっていた。
空からは光が降り注ぎ、町は少しばかり古く見えるが、それでも雷の国の町並みにそっくりだ。
「これは……」
「超常能力者に差別をすべきではない、そう考えてこのような手を打たせてもらいました」
「地下空間に城下町と同様の町を作るとは……というか、よくここまで掘れたな、奴隷か?」
「いえいえ、試験的に実装した《武潜の宝具》を利用したんですよ。ツルハシなどとは効率が違いますね」
《武潜の宝具》……たしか、異世界から召還された道具、だったか。
雷の国――特に首都であるラグーンは異世界からの漂着物が多いとは聞いていたが、それを実用段階に移しているとまでは思わなかった。
「町を見せてもらってもいいか?」
「ええ、どうぞ」
ラグーン王を伴って町中を歩くが、特に変わった様子はない。
それこそ、超常能力者すら外見は普通の人間と変わらないので、何の代わり映えもしない普通の町としか思えなかった。
ただ、それは軽く見た段階でのこと。よく見れば異常が目に付く。
重い荷物を浮かび上がらせて運ぶ者、焼却炉前で炎を発生させ、ごみを焼き払う者。生活の中でも利用している、ということか。
不意に幼女が目に入り、ラグーン王のことを気にせずに話かけようとした。
「ライカちゃん、こんにちわ」
「ええ、こんにちわ。今日も遊ぶ?」
「うん!」
どうやら、ライカもここには来ているらしい。
相手の幼女は六歳くらい。見た感じライカちゃんより四歳は下といったところか。少しばかりライカちゃんがお姉さんに思える。
ライカちゃんはアホ毛を立たせると、その幼女に向かって電撃を放った。
喧嘩でもしているのかと思えば、幼女も電気を発し、互いに雷撃を浴びせあっている。
「なんかビリビリしたね」
「あなたも、結構腕をあげたじゃない」
あれ、何かの遊びだったんだろうか。一応、幼女のことは全て分かると自負しているつもりだが、あればかりは全く分からない。
「あっ、父さん! どうしてこんなところに?」
「善大王様に雷の国を知ってもらおうしたんだ。ライカこそ、習いことはどうしました?」
それを聞いた瞬間、ライカちゃんは何も知らないような様子で口笛を吹き、ラグーン王の脇を通り過ぎようとした。
「サボりましたか?」
「し、知らないわ! あたしは遊びたいから遊ぶのよ!」
そう言うと、ライカちゃんはすごい速度で逃げ去ってしまった。
「あの、追った方がいいんじゃないか?」
「いえ、あの子は言ったら聞きませんから」
「……いや、少し気になる。俺が捕まえてくる」
俺はライカちゃんの残り香を辿りながら、走り出す。