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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
155/1603

修行開始、フィアの戦い

「火の国での会談? 何を話しにいくんだよ、くそ」


 善大王は怒っていた。シナヴァリアも、その理由を理解していない。

 理由は簡単ながらも理不尽。彼はここのところ休日を貰えず、連日仕事漬けなのだ。そのせいで鬱憤が溜まり、まったく関係ない方向に発散されている。


「現在、光の国では鉱物需要が高まっています。このままでは鉱物の高騰が発生し、国が使える資材が大きく減少する恐れがあります」


 鉱物需要が高くなったのは、鍛冶屋の多くが光の国に居を構えたのが原因となっている。

 一昔前は誇りや習慣があり、光の国では行われなかった。だが、近年は無尽蔵のエネルギーによって火の維持に金の掛からないこの場所に目を付けるものが多くなった。

 先代の善大王時代は懐が広く、かなり大勢の鍛冶屋を受け入れてしまったのが原因の一員。

 ただ、それならば影響がなかったのだが、迎え入れた分、他の鍛冶屋も出店許可を出すように物言いをしてきたのだ。

 半ば強制的に受け入れることになり、このような状況に陥った。追い払えば解決する問題だが、そのようなことをすれば国としての信用が失墜する。


「それで、火の国から貰ってこいとでも? ただの交渉じゃないか」


 そもそも何故、大陸を越えた火の国から鉱物を手に入れようとしているのかが疑問になるだろう。

 火の国は六カ国の中で最も鉱物産出量が多く、相対的な価値が最も安い国だ。

 逆に、光の国は最も鉱物が取れない国なだけに、元々鉱物価値は高かった。


「そうですね。ですが、この問題は国の信頼に関わります。その為、会談ということにしています」


 シナヴァリアは鉱物価値高騰を自国で処理したように見せたいようだ。しかし、それは国としての手腕を示すという目的ではない。

 他国に知られれば、身の丈に合わない政治をしたと知られることになる。そうなれば足元を見られることは明白だ。


「それで、こっちの交渉材料は? まさか話術だけで取ってこいとは言わないよな」

「はい、マナを使用可能エネルギーに変換する技術を手札として用意しました。これで入手と口止めには十分でしょう」

「……あの技術を流出させて大丈夫か? 今の今まで、一度も国外に出したことがないというのに」


 シナヴァリアが提示したのは、つまるところ《光の門》の構造物の基礎構造情報だ。

 大地から吹き上げる莫大な量の光属性マナをエネルギーに変換することで、この光の国は無尽蔵のエネルギーを持つ国となっている。

 マナは人間が使えるようなエネルギーではない為、この変換というものは非常に困難極まる。

 さらに、マナは世界を構成するエネルギーであるからして、容易に使われれば世界があっという間になくなってしまうので、簡単に使えないのも当然だ。


「大丈夫です。あの技術は聞きようによっては万能と思われますが、実際はあふれ出すほどのマナがなけえば実用に耐えません」


 光の国は光のマナの本流の真上にある為、効果が強いが、他国でそのようなところはない。つまり、どれだけ無理をしても対して影響がないのだ。


「一応大きく影響を与えるわけではないか。でも、まったく使えないと問題が起こるんじゃないか?」

「それも計算の内に入っています。運用不可能というのはこの技術だけで国を支えようとすれば、というだけですよ。補助として導入することは十分可能ですよ」

「なるほど、嘘は言っていないわけか。だいぶインチキくさいな」

「それでも今まで何一つ手が加えられていない技術ですよ。光の国では考えつかない使い方があれば、思った以上の成果がでるかもしれません」


 シナヴァリアの言い分は建前。内心でそのようなものは確実にないと断じていた。


「分かった。それで、何の鉱物を貰ってくればいい? 鉄か、銅か? もしかして金とか言わないよな?」


 無言で差し出された紙を受け取り、善大王を軽く眺める。本格的に読むのは移動中でも構わないと考えているのだろう。


「ここに書いている奴をヴォーダンに言えばいいのか。一応聞いておくが、暗記しておいたほうがいいか?」

「それについては問題ありません。事前に火の国宛に同様のリストを送っておきました」

「相変わらず気が利くな」

「常々、このような仕事を代理させていただいていますから」


 善大王が余計に仕事を委任するものだから覚えてしまった、とも取れる皮肉気味なシナヴァリアの言葉を受け、善大王は冗談のように頭を下げた。


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