表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
14/1603

8

 翌日、大聖堂にて葬儀が開かれた。

 エルフであるスカーレちゃん、そして管理官であるクラークの葬儀。

夢幻王との関係性については不明だったこともあり、表向きには侵入者ではないという体で話を進めている。当然、事件を知る者にも口外しないように言った。

 祭壇で祈りを終え、黒ずきんを被ったアルマちゃんが隣の席に戻ってきた。


「アルマちゃん、ごめん。スカーレちゃんを守れなかった」

「……エルフの技法を使われたんだよね?」


 俺は無言で頷く。


「たぶん、スカーレちゃんは善大王さんに助けてもらって、嬉しかったんだと思うよ。じゃなきゃ、技法なんて使わないもん」

「だが……俺は――」

「こんな風に可哀想なことが起こらないように、善大王さんが頑張ってくれれば、きっとスカーレちゃんも喜んでくれるよ」

「そう、かな……うん、ありがとう」


 スカーレちゃんの死を悲しむ一方、俺は一つの気掛かりを持っていた。

 それは何日にも渡って俺の頭の中に残り続け、疑惑を広げていく。

 執務室で仕事をしていたある日、突如としてシナヴァリアが話しかけてきた。


「善大王様? どうかしましたか?」

「……シナヴァリアか。いや、夢幻王が気になってな」

「この前の、クラークの一件ですか?」

「ああ、あいつは夢幻王の名前を出していた。それがどういう意味かは分からないが」


 夢幻王が皇になったのは俺と同時期のはず。だとすればそんなに時間は経っていない――だとすればおかしい。クラークが光の国に入ったのは数年前だ。

 夢幻王は現夢幻王ではなく、先代のことを指しているのか? いや、だとすれば変わったことくらい知っているはずだ。

 奴は一体誰に忠義を誓っていたんだ。

 答えは見つからず、俺は悩み続けながらも、書類を処理していく。


「善大王様、《風の大山脈》についてはいかがなさいますか?」

「……そろそろ着手すべきか。闇の国の対処についても同じだ、聖堂騎士に命令を出しておいてくれ」

「分かりました」

 そこで言葉を切ると、シナヴァリアは俺の顔を見てくる。「本当に、お一人で行くのですか?」

「こちらが武力を持っていくと警戒してしまうだろ? だから、俺一人で平和的な解決をしに行く」

「彼等がそれで納得するとは思えませんが。十中八九、話すら聞きいれられないと思います」


 《風の一族》だけあり、シナヴァリアは必要以上に心配しているようだ。宰相として俺の身を案じているとも思えるが、ビフレスト王に宣誓した後になかったことには出来ない。


「それでも行く。この領地問題を解決できれば、善大王としての信頼も増す」

「……そこまで言うのであれば。幾つかのことを教えておきましょう」


 シナヴァリアは筆を取り、紙にすらすらと図面を書いていく。


「族長の名はウィンダート、その真名を知っていると言えば案内されることでしょう。そして、この地図通りに進めば里に進めるはずです」

「真名? 偽の名前でもあるのか?」

「《風の大山脈》に住む人間は真名を隠しているのですよ。特に、外界の人間には」

「……ということは、シナヴァリアって名前も偽名なのか?」


 シナヴァリアはそれ以上答えず、「あまり無理をなさらないように」とだけ言い残して部屋を出ていった。

 《風の大山脈》……か。行くしかないよな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ