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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
132/1603

3

「フィア、です。よろしく……」


 教室は静まり返っていた。だが、それは決して悪いことではない。


「(なにかしたかな? ちょっと怖いけど……)」


 目を閉じ、フィアは適当に目を付けた生徒の心を覗いた。


「(すごい綺麗な子だぁ)」


 すぐに目を開く。そして、フィアは教師に指示されるまま、後方の席に座った。

 フィアは天の国の姫だ。歴代恵まれた容姿を持つとされるだけに、貴族達と比べてもさらに上の段階に彼女はいる。

 物憂げなお姫様、誰もがそんなものを想像していた。

 休み時間に入ると同時に、生徒達が一斉に押し寄せ、フィアに話をし始めていた。


「フィアちゃんって綺麗だね」

「あ、ありがと……」

「貴族なの? みたことない顔だけど」

「貴族だけど……別の国かな」

「こんな時期に入ってくるなんて珍しいね」

「ライトに言われたから……その、入ったの」

「ねね、僕とデートしようよ」

「えっと……私には、ライトがいるから──」

「今日はわたしとデートしてくれるっていったじゃない! フィアちゃん、気にしなくていいからね」

「……う、うん」


 ごった返す人の海に包まれ、フィアは目を白黒させていた。

 そうして授業が開始されるまでの時間、嵐のような時を過ごしたフィアだったが、教師の登場で急場をしのぐこととなった。

 授業自体はとても単調なもので、フィアからすれば取るに足らないものだった。

 ただ、それは飽くまでもフィアからすればという話。授業自体はレベルが高く、男子生徒はともかく、女子生徒は三割がついていけているという程度だった。


「(本当に退屈。こんなの、子供騙しよ)」


 《導術》に関しての基礎理論の授業。十歳の学級といえば、術を使用できる者が半数を超え始める時期だ。

 ただ、使えても二十番台程度が限度。フィアのように二百五十五番台まで使えるような化け物はいない。


「──ではフィアさん、術の順列についてお願いします」


 話を聞いていなかったフィアだが、すぐに目を閉じ、教師の思考を覗く。答えは出てこないが、瞬時にどういう流れかを察した。


「《導術》は四段階に分かれていて、一から二十九までの下級術、三十から九十九までの中級術、百から二百四十九までの上級術、二百五十五の最上級術となっています」


 そこで一度区切り、フィアは続ける。


「規模は順番に、一人を相手にできる術、複数人を相手にできる術、集団を相手にできる術、軍を相手にできる術となっています」


 とりあえず答えられるものを答えた気になったフィアだが、教師はともかく周囲の生徒は驚いていた。


「よく、勉強していますね」


 そこでフィアは感づき、教科書をめくって内容を改める。

 書いてあるのは四段階に分かれていることくらいで、順列の指定すらされていない。さらにいえば、術の具体例すら載っていなかった。

 フィアからすれば当たり前のことだが、ここにいる生徒はまったく知りえない情報。教師ですら、おそらく使えるのは中級程度──良くて上級の序盤程度だろう。


「(本当に子供騙し)」


 とはいっても、この時点で術を専攻で学ぶ生徒というのは少ない。

 貴族であるからして中等部、高等部になった時点で上級術を目指し始めこそするが、初等部では中級術の取得ですら高嶺の花なのだ。

 この時点で学ぶべきは飽くまでも基礎だけ。フィアはそれを取り違えていた。


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