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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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4q

 男に案内された先は、さきほど兵に声をかけられた場所だった。

 そこでは、財布を盗んだ犯人として、兵士に()された盗賊二人と、失神した三白眼がいた。


「おい、あれってどういう」

「運んだんですよ。彼らだって悪いことをした人だ」


 そう言うと、彼は屈み込み「君もまた、人のお金を盗んだ」と言った。

「見ていたのかよ」

「もちろん。私も妙な子を連れ帰るわけにはいかない」


「誰が拾えって」

「ただ、君を野に放ったらどうなるのかは分かりました。私は救った命が無駄に終わるのは好きではありません」

「……」

「君の名は」

「ねぇよ」

「なら、君の名前はウルスと呼びましょう」

「なんでだよ」

「暴れ熊にでもなりそうだから、ですかね」


 ウルスは怒ろうとするが、そんな彼を上回る勢いで怒声が響いた。


「お前、何をしておる!」

『えっ!? なんで……』


 フィアは近づいてくる男を見て、驚愕した。

 彼女の驚きも当然だ。彼はこの時代においても、やはり同じままの姿をしていたのだ。


「……はい? もしかして、私ですか?」

「お前じゃ。今、何をした」

「捨て子を拾っただけですよ」

「時を操ったな、それも結構な時間」


 老人にそれを言われた瞬間、天の国の男は目を細めた。


「あなたは?」

「ワシはヴェルギン。この国の……《雷の太陽》じゃ」


 ウルスは何も理解できなかったが、天の太陽はしっかりと理解していたあ。


「同じ《太陽》の……なるほど」

「お前は自分の力を理解して、このようなことをしておるのか」

「どうして力を使っていると分かったんですか?」

「今は、ワシが話しておる」


 ヴェルギンはげんこつを叩き込もうとした――が、天の太陽は能力を発動した。


『時を止める能力……この世界じゃなきゃ、私だって対応できるかどうか分からないわね』


 今のフィアは記憶を流れる存在であり、故に時間の影響をさほど受けなくなっていた。

 しかし、停止世界の住民であるはずのヴェルギンは等速のまま、拳を叩き込んできた。


 停止が解除され、コマが飛んだように天の太陽は地面に転がった。


「……《雷の太陽》はこの力に抵抗できる能力があるんですか? それとも、《太陽》ならば誰でも?」

「使うな、と言っておるんじゃ」


『《雷の太陽》に対抗する力があるなんて聞いてない……それに、あの能力は《天の星》だって――私だって、破れないっていうのに』


 不意に、フィアはかつてヴェルギンと戦ったときのことを思い出した。

 彼は神器による優位を持っていたが、それだけでは説明できないほどの強さを持っていた。


『何かがあるとすれば、この人自身……ただ、ここじゃ聞けない』


 フィアは酷く驚いたが、答えを聞くことができないことを歯痒(はがゆ)く思っていた。


「……そうですね。ここはこちらが鞘を収めましょう」


 ウルスを連れ、その場を立ち去ろうとした彼を見つめ、ヴェルギンは言った。


「お前は、どこで《選ばれし三柱(トリニティア)》であることを知った」

「自然と理解できただけですよ」

「師はいない、か。ならば、ワシのところに来い」

「天の国の人間を引き抜くつもりですか」

「なに、そこまで大それたことを言っているわけではない。ただ、しばらく説教を垂れてやろうという話じゃよ」


 その一言でおおよそを理解した天の太陽は頷いた。


「では、ついていくとしましょう。連れが一人居ますが、大丈夫ですか?」

「おい、勝手に……」とウルス。

「構わん……いや、それどころかお前がなんと言おうと、ついてきてもらうつもりじゃった」


 ウルスは抵抗しようとも考えたが、さすがに二人の男達が自分の認識を越えていると理解し、下手に暴れることを避けた。


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