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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1290/1603

26q

 シナヴァリアはしまった、という顔をした。

 彼らしくもない態度だが、善大王(・・・)はそれを面白がった。


「俺をつけていたのか?」

「いや、俺も宿に寄る途中でな、その時に軍人サン同士が浮ついた話をしていたもんだから」


「(アカリめ……)」


 自分の油断と、それを許したことが問題ではあったのだが、今はそれを鑑みる余裕がなかった。


「あいつとは内々に話すことがあった」

「……なに?」

「お前も騎士ならば分かるだろう。それを聞き出すことがどういうことか」

「ああ、機密って奴か」


 二人は食堂棟を抜け、快晴のもとに出た。


「そういうことだ。私には付きまとうな」

「そんなに付きまとってねーよ。それに、言われるまでもねーよ」


 彼はそういうと、諦めたように歩き出す、


「お前は思ったよりも大したことのない男らしいしな」

「勝手に言え」

「教官殿に忠告を一つ。ああいうことをする時は、場所を選ぶことだな。あの後輩ちゃんの盛り上がりを聞かされたんじゃ、お隣さんに迷惑だぞ。それじゃ――」


 シナヴァリアは彼の肩に手を置くと「飲みにいくか?」と言った

「ん?」

「さっき言っていただろう。少しくらいは付き合っても構わない」

「付きまとうなって言ったろ」

「……お前とは、少しばかり話がある」

「あーなるほど。よし、いいだろう」


 優劣は逆転し、善大王(・・・)が主導権を握るような形になった。


 二人は酒場に向かうでもなく、喫茶店に入った。

 昼飯時で混み合っている場所が多いものの、そこは高級店だけあって優雅な時間が流れている。


「ここなら聞き耳を立てる奴もいない」

「何故、そうだと言い切れる」

「俺もよく使うからだ。辺りの奴らが妙な反応を見せたことはない」


 シナヴァリアは目の前の男が何を知っているのだろうか、と疑問に思った。


「単刀直入に言おう。この件は口外するな」

「一々広めてしてどうする。ってか、見た目の通りにむっつりなんだな」

「私は好きでやったわけではない」

「俺は好きでやってるけどな」


 やはり軟派な男だ、と確信を持ちながらも、シナヴァリアはこの男を黙らせなければならなかった。

 別段、誰かと肉体関係を持ったところで、大きな問題にはならない。


 ただし、相手がアカリであるということを考えると、色々と難儀があった。

 彼女は善大王が保護した相手であり、諸事情で暗部に入ったものの、場合によって善大王の養子になっていた女なのだ。


「それで、どうだったんだ?」

「なにが」

「機密の具合」


 シナヴァリアは口許を歪めた。


「おいおい、怖い顔をすんなよ」

「聞いてどうする」

「うーん……あの子に手を出す気にもならないしな、とりあえず同類の感想を、と」

「先ほどから同類だなどと、何のことを言っている」

「いや、その時に俺も連れがいたんだよ。かなり可愛いブロンドの女の子」

「……」


 シナヴァリアはふと、その当時のことを思い出した。


「(確かに、妙に隣がうるさかったことがあったな……)」


 子供の嬌声が聞こえてきたこともあり、ことを終えたあと、二人は隣に突入するかどうかを話し合ったことがあったのだ。


「隣で(さか)り合っているもんで、こっちも()り上がっちゃったわけだ」

「言っておく、私はお前とは違う」

「なんだ、お前は幼女好きの男だと思っていたが、違うのか」

「違う」

「ハッ……道理で、だな」


 シナヴァリアは顔を顰めるが、給仕役が来るのを確認したのか、善大王(・・・)は人差し指を口の前に持ってきた。

 そして、運んできた女性に愛想のいい笑みと共に礼を言うと、コーヒー二杯を受け取った。


「とりあえず飲むか。ここのは美味しいぞ」


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