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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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22q

 フィアは退屈になり、窓の外を眺めながら、話半分に様子を窺っていた。

 しばらく経ち、二人の声が止まった時点でフィアは振り返る。


「……」

「……」


 二人は黙ったまま見つめ合っていた。


『どうだったんだろ』


 フィアは答えが気になり、宰相の頭を覗いた。


「(不合格だ。しかし、この男、話に聞いた通りであれば、山で学んだはず……)」


 フィアはがっかりするが、すぐにぞっとした。


『あれ、これじゃシナヴァリアさん……光の国に来なくなる? あれ、私が無視してたから悪かったの!?』


 手出しをしないようにしよう、と思ったばかりだったが、彼女は少しだけ反省した。

 しかし、すぐにそれは覆る。


「ビフレスト王から何か聞いたか」

「いえ」

「……正直に言おう、不合格だ。今までどこで学んできた」

「風の大山脈で。父が所蔵していた本から学んできました」

「なるほど」


 宰相は渋い顔をした後「どうしてこうした答えになった」と聞く。

「分からない問いについては、その場で考えました」

「なるほど。今言った通り、不合格は確定だ。しかし、お前には見込みがあるとみた――暫定的に、騎士団に所属してもらう」


 シナヴァリアは解せないと言った様子で宰相を見つめた。


「と、言うと」

「お前に絶対的に不足しているのは、知識だ。能力については問題がないと判断した。だからこそ、騎士団に所属して働いてもらう。学習は職務時間外に行え」


 それを聞き、シナヴァリアは頭を下げた。


「しかし、お前は正規の騎士団には配属させない」

「非正規の軍があると?」

「国家直轄の、(れっき)とした騎士団だ。しかし、表立った身分はない――国家運営の裏方、暗部への所属だ」

「分かりました」


 即決するシナヴァリアを見て、宰相は不機嫌そうな顔をした。


「詳しく聞くこともなく承諾するとは、どういうことだ」

「その異質な騎士団であっても、学ぶことはできるのでしょう? であれば、構いません」

「人を殺すことも多い。無論、殺されることも。公式の身分も低く、脱退は許されない――分かっているかも知れないが、メンバーは決して良い者ばかりではないぞ」

「それは私にしても同じことですよ」


 彼の様子を見て、宰相は口許を緩めた。


「風の一族と聞いて、戦力的な評価はしていた。しかし、君はやはりこちら側の人間だったようだ」

「……」

「私はこれまで、多くの人間を見てきた。だからこそ、おおよそは分かるのだ。羊と犬と、そして狼の違いを」

「私は狼だと」

「ああ、そうだ。犬に紛れ、群れの害となる者を取り払う存在だ」


『なんか物騒だなぁ』


 フィアは呑気に話を聞きながら、善大王の存在を考え始めた。


「(シナヴァリアさんが光の国に入ったってことは、ここからは凄く注意しないとだね)」


 彼女はシナヴァリアと善大王の出会いを知らない。

 だからこそ、二人が遭遇するタイミングを見逃せなくなった。

 これまではそこそこに観察していたが、もっと真面目にしなければならない、ということである。



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