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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1285/1603

21q

「ビフレスト王から話は聞いているよ」


 案内された応接間で口を開いたのは、この国の王である善大王だった。


「風の一族、か。希望は?」


 優しげな善大王と違い、その男は温和ではなく、宰相らしい態度を取っていた。

 希望は、と聞いてはいるが、眉を顰めた態度などからして理解した上で聞いているようだ。


「文官を」

「……私としては、君を戦力として組み込みたい。風の一族としての実力を見せてもらいたいのだが」

「いえ、私は風の一族ですが、非力です」

「文官と言うが、容易になれるようなものではない。そして――言わせてもらうが、不足もしていない」

「その上で、お願いさせてもらいます」


 そう言い、シナヴァリアは頭を下げた。

 善大王はかしこまる彼を見て「頭をあげて! 大丈夫、推薦し――」と言いかけたが、宰相はそれを遮る。


「試験を受けることは聞いているか?」

「……あるだろう、ということは覚悟していました」

「ビフレスト王たっての願いだ。だからこそ、こうして会う機会も設けた――その上で、私は君を騎士団に推薦しようと言っている。その条件ならば、無条件で受けよう」


 破格の条件だった。

 騎士団の一員となれば、もはや貴族も同然である。身元不明――王の紹介はあるが――で実績もない男を取り立てるにしては、あまりの好待遇だ。


 愛想こそはないが、宰相は通常では考えられない条件を提示していた。もちろん、シナヴァリアはそれを理解している。


「私はこの国で多くのことを学びたい」

「……君はどこかの間者(かんじゃ)か? でもなければ、この条件を蹴るのは異常だ。光の国の中枢に潜り込み、なにかの悪事をするでもなければ。いや、あの山にそれだけの知恵者がいるはずもないか」


 明らかな挑発だが、シナヴァリアは乗らなかった。


 ただ、皮肉なのが彼の言った内容が、現代では実際に実行されたということだ。

 管理官のクラーク(しか)り、法王代理のバルバ然り。


「試験を行わせてください」

「使えないと見れば、それまで。無論、騎士団の件もなしになるが、それでも受けるか?」

「はい」


 迷いなく答えられ、宰相は笑った。


「(貴族にまったく興味がないとは、馬鹿でなければ大した男だ)」


 ここでの提案を蹴るようであれば、軍人として使うには面倒な人材だ。

 だからこそ、彼の言い分は全て本気だったが、その上でシナヴァリアは僅かにも迷わなかった。


 それもそのはずだ。彼は外界での地位や名誉に興味などなく、ただ単純に統治者として成長することを望んでいるのだ。


「では、受けてもらおう。善大王様、この男を連れて行きます」

「シナヴァリア君、頑張って。応援くらいしかできないけど」


 シナヴァリアは頭を下げると、宰相に続いた。


 個室に連れて行かれると、椅子が二つ対面で置かれていた。

 二人は座ると、問答が始まった。


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