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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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19q

「それを聞いたところで、引き下がるとでも」

「……懸命なら、山に帰る。諦めが悪いなら、今からでも下働きに戻るんだな」

「(ことを急いたか)」


 さすがの彼も観念し、城を去ろうとした。


 しかし、フィアはこれではいけないと、手を出そうとした。


「その人の願い、聞いてあげて」

「……フィア? 何故、こんなところに――それに、その格好はどうした」


 シナヴァリアは突然聞こえてきた声に驚くと同時に、どこからその人物が現れたのだろうか、と疑問に思った。

「神様のお告げだから」

「……本当か?」


 フィアが頷くのを、ビフレスト王は見た。


「仕方ない。フィアが言うというのであれば、その通りなんだろう」


 あまりにあっけなく、王の意見が切り替えられたこともあり、シナヴァリアは驚愕した。

 フィアも、驚いた。


『あれ、私ってこんなこと言ったっけ』


 シナヴァリアの窮地を救ったのは、過去(このじだい)のフィアだった。

 寝起きなのか、寝間着のまま謁見の間に現れたらしく、ビフレスト王はそれに驚いていたのだ。


 しかし、フィアは過去の自分をみて、酷い違和感に襲われていた。


『(私って、こんな感じだったのかな?)』


 今のフィアは生き生きとしており、少し前のフィアは死人のような目をしていた。

 しかし、この時代のフィアは自棄(やけ)気味であり、父が拒絶しようものなら癇癪(かんしゃく)を起こしそうな雰囲気を漂わせている。


『(それに、神様がそんなことを言うなんて思えないけど……)』


 過去の自分のことすらろくに覚えていないフィアは困惑し、様子を見るどころではなくなっていた。


「フィア、服を着替えてきなさい」

「はい」


 去って行くフィアをよそに、王は話を始めた。


「――ということだが、お前を天の国に加えるには一考の余地がある。なにせ、王を恐喝するような男だ……だからこそ、光の国で修行をしてきてもらおう」

「修行?」

「そうだ。ある程度使えるようになるまでは、あちらで学んでこい。無論、口利きはこちらがしよう――とはいえ、仕官できるかどうかは、お前自身の能力によるところが大きい」


 つまりは、試験を受ける権利を与える、という話だ。

 シナヴァリアが単純に使えない男であれば、それを掬い上げることはできない、と言っているのだ。


 予期せぬ遠回りだが、下働きからのスタートよりはかなりの近道となった。


「ありがとうございました」

「あの国で滅多なことはするな。私はウィンダートから聞いていたからいいが、そうでなければ――」

「分かっています」


 ビフレスト王は疑わしそうな顔を向けるが、諦めたように顔を逸らした。


「では、早く行け。馬車も用意するまでもないな?」

「もちろんです」


 そう言うと、シナヴァリアは謁見の間を出た。


 フィアは父とシナヴァリアの会話が終わると同時に走り、彼を追い抜く勢いで別の場所に向かった。

 そこは、この時代の自室だった。


 扉を少し開けて中に侵入すると、椅子に腰掛けた自分が目に入る。


『……声が出せれば、聞けるんだけど』


 過去の自分と話すという、凄まじくリスクの大きなことを平然と実行する辺り、彼女は時間遡行者としての自覚がなかった。


「ティアちゃん(・・・)に頼まれたから、パパに言ったの」

『えっ!?』


 誰かと会話をしているのかと思い、部屋の中を見るが、当然誰もいない。


「あなたは誰?」


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