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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1270/1603

6q

 切り株が印象的な場所で、二人は戦闘を開始した。


 風の一族は障害物を用いた超起動能力が強みだが、ここには足場となるものはない。

 ただ、それで勝負に影響をもたらすことはないだろう。なにせ、二人とも同じ風の一族なのだから。


 高速で走り回り、互いに距離を計り会っていた。

 シナヴァリアは距離を取り、彼の妹は接近に努める。


「逃げ回っても勝てないよ」

「さぁ、どうだろうな」


 妹が加速したと見た瞬間、シナヴァリアは凄まじい切り返しで接近を行い、彼女の読みを崩した。

 加速中で体が引っ張られている彼女に対し、すれ違うようにラリアットを放った。


 顔面に直撃し、妹は転がるが、両者とも戦闘を中断しない。

 彼女はすぐさま立ち上がり、防御態勢を取る。シナヴァリアであれば追撃を行うと読んでのものだろう。


 実際、彼女の読み通り、彼は踏みつけ(ストンプ)で攻めてきた。

 攻撃が空振りしたように思えたが、彼はなおも続行する。


「(……やばっ)」


 防御を崩し、彼女は飛び退いた。

 シナヴァリアの鋭い踏みつけは、彼女の足があった部分の地面を抉る。

 もし、彼女が避けていなかった場合、足の骨はへし折られ――さらに連続攻撃に続いていたことだろう。


 ここで攻防が終了し、互いに距離を保ったまま止まる。


「やっぱり兄貴は強いね」

「それほどでもない」


 彼は若いながらに謙遜した。

 だが、彼の妹はわくわくしたような顔で、彼を見つめる。


「本気で戦えるって面白いよね」

「まあな」

「それでも勝てないってのは、もっと面白い」

「……」

「それを越えてやる! って、頑張れるから」


 彼女が大きく息を吸い込むと、シナヴァリアは防御の構えを取った。

 瞬間、途轍もない速度で彼女が迫ってきた。


 しかし、シナヴァリアは落ち着き払った様子で横に避け、回り蹴りで地面に叩きつけようとする。


「まだ!」


 彼女は杭のように足を地面に突き刺し、その足を軸に制動力の蓄積された蹴りを放った。

 そのスピードは彼の蹴りの速度を上回り、一歩も二歩も先に到達する。


 咄嗟にガードしようとするも、彼の腕は治ったばかりで、動作は反射についてこれなかった。


 常人に放てば殺人級の蹴りが胴体に直撃し、シナヴァリアアは吹っ飛ばされる。

 その勢いは途轍もなく、一本の木を軋み上がらせ、ようやく止まるほどだった。


 そこで、勝負は決着した。

 妹は駆け寄ってくると、すぐに心配そうな顔をし「大丈夫?」と言った。


「……大丈夫だ」


 そうは言うが、決して大丈夫と言える状況ではなかった。

 あの場面、彼はガードを決めることで、耐えきれると確信していたのだ。事実、防いでいれば戦闘続行は可能だった。


 戦闘を長引かせない為、攻めに転じすぎたことも敗因だった。

 結果的に、彼の骨はひどく折れ、今こうして対応できているのも興奮によるものである。


「さぁ、これで満足だろ」

「……うん」


 そう言うと、シナヴァリアは早歩きで――妹を振り払うようにして里へと戻っていった。


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