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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1258/1603

6

 ――洞窟周辺にて……。


 フィアの能力によってアルマの所在を突き止めた善大王は、彼女を連れてその場に来ていた。

 連れているとは言ったが、正しくは彼女が自主的についてきたのだ。


「(ここにいるのは確かだけど……でも、なんで動いていないの?)」


 彼女が真っ先に疑問を覚えたのは、そこだった。

 フィアに負けるはずのないという絶対の自信、といえば簡単な話だが、本当にそこまで単純とは思い切れなかった。


「ライト、気をつけて」

「わかった」


 二人は歩みを進め、洞窟の中に踏み入ろうとした。

 瞬間、暗闇の中から黄色をした一対の光が迫ってくる。

 フィアは咄嗟に逃げるように言うが、善大王は迷わず右手を構えた。

 彼はアルマに対しても一撃が成立すると読み、回避よりも迎撃で対応するのが適切、だと考えたのだろう。


 しかし、それははじめから話し合うことを放棄した、完全な殺しの一手に他ならない。


 紋章が輝きを放つと、それまでのものとは比較にならない速度で光の意図が拡散し、アルマに襲いかかった。

 だが、アルマはその範囲を読み、顔が地面を擦るような体勢で接近を仕掛けてくる。


 噴射された黒い瘴気を残し、アルマの姿が消えた――ように善大王は認識していた。

 だからこそ、次の瞬間に自身の真横へと到達していたアルマを捉え、彼は戦慄する。


「くっ――」


 フィアは咄嗟に地面を蹴り、アルマを打ち抜こうとした。

 だが、彼女の光線はアルマの到達することはなく、黒い蝙蝠の翼に遮られる。


「これがこっちの世界最強ってことか。まぁ、肩書きに偽りなしだな」


 僅かに焦げ付いた翼を一瞥し、蝙蝠男はフィアを見つめた。


「魔物……? いつの間に」

「俺だけじゃない。今日はお前らを――いや、そこの善大王を葬る為に、無数の手勢を揃えてきた」


 彼が言ったと同時に、彼らを囲うように無数の魔物――それも、ロード級も入り交じった大部隊が出現する。


「なんで……!? 魔物の力だったら、見通せるはずなのに……ッ」


 そう言いながら、彼女は虹色の光を宿した瞳で、再び周囲を確認した。

 すると、藍色の力の残滓が消えていくのが分かり、この大がかりな仕掛けを施した者の正体が判明する。


「ライム……」

「そういうこった――っても、ここまで用意したのは無駄だったらしいが……」


 勝利を確信して振り返ると、アルマは善大王の首筋を撫で、涙を流していた。


「やっと帰ってきてくれたんだね、おにーさん」


 その場の誰もが、硬直した。硬直していた。

 善大王は《皇の力》で薙ぎ払うこともできず、命を取れる状況で愛撫だけを行う少女に、恐怖を覚えている。


 蝙蝠男やフィアも、何故彼女が殺そうとしないのかが分からず、完全に固まっていた。


「おにーさん?」

「誰なんだ……その、お兄さんというのは」

「……おかしいなぁ、おにーさんは、おにーさんでしょ? 善大王で、やさしくて……」

「何を言って……」


 反論しようとするが、その言葉が浮かび上がることはなかった。

 彼女が誰かと勘違いしていることは確かなのだが、それを否定できる材料が、彼にはなかったのだ。


「俺は……くっ!」


 彼は完全に停止していた力を起動させ、光の糸をアルマに向かって走らせる。

 彼女もその接近を察知し、空中へと飛び退いた。


「遊ぶんだね! いいよお、また一緒にあそぼ!」


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