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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1251/1603

12F

 マントをローブのように被ったライカを連れ、ディードは町中を歩いていた。


「お前は何故、ああなっていた」

「たぶん、ライムの馬鹿にやられたから。でもねーと、アタシを洗脳するなんて無理だし」

「そういう、ものなのか」

「……できるとしたら、って話。ほんとーはライムだってアタシを洗脳なんてできるはずねーんだけど……」

「何を言っている。巫女様は闇属性の頂点――幻術に関して言えば、上に出る者はいないのだ」

「じゃあアンタは、その巫女様なら石ころを洗脳できると思うわけ?」


 わけの分からないたとえに、彼は困惑した。


「石? できるわけ――話を逸らすな」

「巫女に洗脳を施すってのは、そういうことだし。それに、あれは洗脳なんてもんじゃなかったし……」


 ライカが視線を逸らしたのを見て、ディードは急かそうとした。


「どういうこと――」

「しっ」


 何かを言われるのかと思い、彼は黙った。

 背を向けてきたライカをじっと見て、語り始めるのを待つ。


 しかし、彼女はいつまでも話し始めず、ディードは再び催促しようとする。


「これ」

「は?」

「これにするし」


 言われ、ケーキ屋の前に到着していることに気付いた。

 彼女は何を食べるか、ただ悩んでいただけだったのだ。


「馬鹿馬鹿しい……」

「さっさとするし……続き、聞きたいっしょ?」


 「なに……」と眉を寄せたディードを見て、ライカはニタァと悪戯じみた笑みを浮かべる。

 彼は納得しがたいと言いたげな顔をしながらも、やむなく金を出した。


 満足げなライムとは正反対に、ディードは非常に不満そうだったが、すぐに真剣な表情に戻る。


「それで」

「戻ってから」

「……」


 彼女が黙ったまま、左右に視線を向けていたこともあり、彼は反論することもなく戻ることにした。

 当たり前だが、巫女の名を口にすれば、嫌でも目につく。

 その上、ディードは軍服で、アルマは軍のマントを被っているのだ。

 軍への当たりが強くなり出している今の町中で、このようなことを話せば、聞き耳を立てられてもおかしくはない。

 それを考えず、行きで話していた辺り、彼も鈍ぶかった。

 長らく廃人状態のライカの近くにいた影響からか、彼の判断能力は著しく低下していたのだろう。


 黙ったまま、二人は隠し牢の中に戻り、ライカはケーキを食べ始めた。


「聞かねーの?」しばらくして、ライカが言う。

「食事の後でいい」


 ようやく彼の頭も回り出してきたらしく、冷静に行動を取るようになっている。

 ライカは感謝するでもなく、「そ」とだけ言い、目の前の菓子に視線を落とした。


「ごちそうさま。それで、何の話だっけ?」

「巫女様の幻術が、普通のものと違うということだ」

「あーそこね。思い出した」


 純粋に忘れていたらしく、ライカはディードの目を見て話を再開する。


「属性の七色は知っている?」

「当然だ」

「アタシは人の魔力……ってより、ソウルを感覚で理解できるわけ」

「それで」

「人それぞれ、その感触は違うし。でも、属性が混ざり気のない、純粋なものになればなるほど、色が目につく」

「巫女様は、藍色と」


 ライカは頷き、指先から紫色の電撃を放出した。


「アタシの場合は、紫。アンタは――みょーに濃い藍色なのよね」


 ディードは何も答えなかった。


「つーわけで、ライムの幻術なら藍色の気配に気付くってわけ。実際、それは見えたし、耐えることもできたし」

「ならば」

「その後、黒色の何かが近づいてきて――抵抗はしてみたけど、まぁ無理だったってこと」


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