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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1250/1603

11F

 ――闇の国、隠し牢にて……。


「ごきげんよう。ライカちゃんは――」

「相変わらず、です」

「……驚きですわね。あなたは自国の民を多く殺した巫女を、酷く憎んでいると思っていましたのに」

「なんのことでしょうか」

「きっちりお世話、してくださったようで」


 ディードは清掃のことをさしていると考え、「放置するのは不快ですから」と答えた。

「ライカちゃんと、たくさんお話をしてくださったことですの」


 何故知られたのだろうかと思い、身を震わせた。

 ただ、相手は闇属性の頂点である。それを見抜くくらいは造作もないこと――と彼は自信を納得させた。


「外に連れて行かれるのであれば、顔は隠しておいてくださいまし。かの戦いで、ライカちゃんを知る方は増えていますので」

「これを連れて行くと?」

「老婆心ですわ。では、引き続き任せますわ」

「……はい」


 ライムは早々に立ち去った。

 彼女が随分と久しぶりにきたもので、ディードは僅かばかり驚いていた。

 ライカが壊れた時点で、もう彼女はこないものと思っていたのだ。


 今回が(たま)の監視だったにしては、明らかに変化に気付いていた。

 彼はライムの真意を悟りかね、毎日そうするように、椅子に深く腰掛ける。


「……お菓子、今日はねーの?」


 ライムの悪戯かと思い、ディードは入り口を直視した。

 しかし、入り口は固く閉ざされ、声が届くとは思えなかった。


「おい、どこ見てんの? こっちだし、こっち」

「……何故、話せる」

「そんなの、アタシが知るわけねーじゃん」


 ディードは驚くを通り越し、唖然としていた。

 どう反応して良いものか、分からなくなっていたのだ。


「……かし」

「なにがおかしい」

「お菓子! ねーの?」

「……ない」


 ライカは露骨に不快そうな顔をし、ベッドに横たわった。


「なら買ってくりゃいーじゃん」

「……」

「お前は何故、それをもらえると考えている」

「何回か、持ってきてなかった?」


 ライカは生意気な態度から一変し、純粋に質問するようにそう言った。


「分かった。用意する」

「……ってか、アタシも行くし」

「は?」

「ライムも言ってたじゃん、外に行くなら顔を隠して行けって」

「お前、どこまで覚えている。いや、いつから正気だった」

「割とずっと。外で何が起こってるかは大体分かってるつもりだし」

「それがどうした」

「聞かれたから答えただけだし」


 言われてみればその通りなのだが、ディードは自身でもよく分からないままに、反論していたのだ。


「さっさと準備するし」

「断る。敵国の人間に――」

「今は、こっちの兵器って話じゃん? なら、丁寧な対応をするもんだし。ってか、前のケーキは微妙だったから、アタシが選ぶし」


 言うに事欠いてな相手を目の前に、ディードは苛立ちを覚えた。


「お前は――」

「はいはい、さっさとするしー元隊長の下っ端」

「わたしが下っ端だと? わたしは巫女様直々に、兵器の管理を任された――」

「めんどーな仕事を押しつけられただけっしょ? そーゆーのはいいから、さっさといくしー」


 大きな時間の断絶を感じさせる、異様に呑気な子供に気押されるように、ディードは渋々出発の準備を進めた。


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