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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1242/1603

3

「……なるほどな」


 夜更けに、善大王とシナヴァリアは向かい合っていた。

 フィアはとっくに眠りについているが、彼は眠ることもなく、己の仕事を続けていたのだ。


「私が余計なことさえしなければ」

「いや、運が悪かっただけだ。それに――言っただろ、俺も手間を掛けすぎた」


 シナヴァリアは自身の行動――天の国との同盟締結方法について謝罪していたが、善大王は大して気にする様子ではなかった。


「ただ、人を信じ切れないのはお前のよくないところだ、シナヴァリア」

「公にしたところで、民は信じませんよ。それに、《神皇派》に噛みつかれた時点で、結果は同じでした。素直に、あなたを待つべきだった」

「全て同意するが、歩み寄る努力はすべきだろう」

「善大王様らしくもない。説教ですか」


 説教、と言われた瞬間、善大王は驚いたような顔をした。


「何故、そう思う」

「私はことの顛末を全て話したつもりですよ。アルマ姫の起こした奇跡を目にしても尚、民は変わらなかった」

「だから、努力は無駄だと?」


 シナヴァリアは頷いた。


「……なるほど、それで俺の言い分がクソほどのくだらない、ただの説教に聞こえたわけか」

「……」

「俺は懲罰の類で、そういう無駄なことを言うのは好きじゃないんだがな」


 二人は妙にかみ合っていなかった。

 しかし、シナヴァリアは反することもなく、黙って聞いている。


「ものの道理として、求めなければ結果は手元に来ない。分かってもらおうともせず、理解されることもない」

「だからこそ、それを避けたつもりです。だからこそ、失敗は認めています」

「なら、お前は七色の世界で何を見てきたんだ」


 今度は我慢などではなく、本当に言葉を失い、彼は黙った。


「聞く話であれば、お前もまた民の意思を感じ取ったんだろう? それを見ても尚、今のような言葉を吐くか」

「やはり、説教ですね」


 善大王は笑った。そして、何をいうでもなく、彼の言葉を待った。


「ですが――」


 彼は癖のように、民の意思が分かったのは失敗した後と、言おうとした。

 反省などではなく、失着の要因を探る彼からすれば、それが自然だった。しかし、すぐに言葉を呑み込む。


「いえ、確かに民草のことを考えていませんでした。少しは――私にできる限り、努力すべきでした」

「反省できたならば、やはり責任を追及するまでもない」


 善大王が言わんとしたのは、「お前も奇跡を見て、変われなかった男だ」ということだった。


 民の不安などを共有した上で、今のような為政者の面からの意見を吐くということは、本心の部分が変化していないことの証明である。

 良くも悪くも、彼はそれが気にくわなかったようだ。


「善大王様」

「なんだ」

「変わりましたか」



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