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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1241/1603

2

 ――夕刻、執務室にて……。


「ライト、お疲れ様」

「……ああ」


 善大王は短く言い、フィアの居るソファーに向かった。


「ライトよくできるよね。ああいうの私ならやりたくないなぁ」

「巫女ならそれくらいできとけ。まぁ、今回のに関して言えば、俺も相っ当に疲れたが」


 彼は城の上から、集まっていた民に言葉を掛けたのだ。

 それは此度の事件の罪を全て許して欲しい、ということ。

 シナヴァリア、タグラムはもちろん、教会に至るまで全ての罪だ。

 これには多少の反発はあったが、そこは先の戦いの影響もあり、容易に納得させることができた。


 その上で、五カ国と同盟を結び、闇の国を打ち払うという計画を伝えた。


「みんな協力して頑張りましょう、なんてのは俺には合わない話だ」

「ライトはそういうやり方を選ぶ人かと思ったけど」

「ま、おおよそ間違いじゃないな。兵の数が多けりゃ、その分動きも大きくできる。ただ、これは命令を聞く都合の良い奴に限った話だ」

「そういうことね」


 深く聞かなくなったのは、彼女が善大王の考え方を理解し始めていたからだった。


「……そろそろいい頃合いじゃないか?」

「シナヴァリアさんは?」

「来て困るもんじゃないし、来る予定もない。もちろん、他の来客の予定もない」


 それを聞き、フィアは頷いた。


「やっぱり、あれ(・・)はアルマだったよ」

「そう、か」

「正直、あれが巫女の形を残しているのも信じられないの。なんっていうか……」

「燃え(かす)が残っている、って感じか?」


 善大王の言葉に、彼女は驚く。


「えっ」

「違ってたか?」

「ううん、そんな感じ。でも、ライト分かってたの?」

「……いや、俺が気付いたのはフィアが打ち落としてくれた時だ。あの時まで、アルマの奇襲に全く気付けなかった」


 善大王はフィアに一任していたとはいえ、全く反応できなかったことにショックを受けていた。

 相手が魔物であればまだしも、相手は彼が得意とする少女なのだ。


「あの一瞬に、アルマの精神が残っていることは分かった。外面(ガワ)も当人のままだ……しかし」

「うん。私が見た限りじゃ、ほとんど魔物になっているよ。巫女の力が生きているからなのかもしれないけど、この光の国でも活動できているみたい」

「……まだ巫女なのか?」

「正直、怪しいと思う。アルマ、意図的に光属性のマナを吸収していないように見えたから」

「あの耐性持ちの魔物の技術を流用しているかもしれない、か」


 遅れてケースト大陸に戻ってきた二人だが、読みは冴えていた。

 アルマが魔物になったのは、ローチ型の魔物と戦った後――あの魔物らの性質が流用されていたとしても、おかしくはないのだ。


「もしアルマと対峙した時、どうするべきだと思う」

「それ、ライトが聞くの?」

「皇として言うなら、倒すべきだ」


 当然のことを言うような顔で、善大王はそう言った。

 そんな彼の顔を見て、フィアはどこか怖さを覚えたらしく、視線を逸らした。


「ただ、アルマは巫女だ。そっちの領分もあるだろう……その意味で聞きたい」

「うん、アルマとは戦うべきだと思う。もし、それで死んじゃうなら、それは仕方がないことだと思う」


 仕方がないこと、という言葉の真意はつまり、死亡しないはずの巫女が死亡した時点で、それはもう違う存在であるという意味だった。

 マナを封殺できるフィアがそうするのであればともかく、人間の手で倒されれば光属性のマナが制御できない、ということの証明になる。


「もしアルマがまだ巫女のままなら、その時は私が倒さなきゃいけないかな。きっと、あの子はやめろっていってやめられる状況じゃないから」


 巫女のままなら、人が倒せる類の存在ではないことは、ティアやライカの一件からして明白だろう。

 事実、《天の星》は暴走した巫女を粛正する役割を有している。

 今回の属性変換などが、専守防衛に特化した《星》に対抗しうる力であることは分かるだろう。


「それで、フィアの本音は」

「友達として、助けてあげたい」


 善大王はフィアの空色の瞳をじっと見つめ、口許を緩めた。


「なら、できるように頑張るんだな。俺も多少は手を貸せるが、今はアルマの件に介入する暇がない」

「うん! ありがと!」


 酷く冷淡に聞こえる言葉だったが、彼女はその本音を理解していた。

 これはつまり、魔物な上、最大有害要因を光の国としては放置する――ということを示している。


 そして、その対処をフィアに任せた、とも。


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