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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1229/1603

22n

 この行動を見て、彼は余裕を持って《魔導式》の在処を探る。

 ダーインが何の策もなく突進を仕掛けてきた、ということがあり得ないと分かりきっていたのだ。

 しかし……。


「ない……だと? あの痛みの中、どこに隠し――」


 ダーインはバルバの服を掴むと、そのまま地面に押しとした。

 そのまま、さほど長くもない爪で皮膚を引っ掻き、その口で体に噛みついた。


 あまりにもあり得ない行動に、バルバはエルフの技法を使うという発想が出なくなる。


「(どういうことだ。気でも違えたか!?)」

「こうも痛くては、《魔導式》など刻めるはずがなかろう!」


 彼は正気のままに狂っていた。

 強い怒り故に、ある程度の痛みならば耐えられるだろう。しかし、上級術の闇属性を喰らった以上、気合いで堪えることは不可能。


 だからこそ、彼は物理攻撃に打って出た。

 彼には武術の心得はない。故に、このような野蛮な攻撃方法が選択されたのだ。最も高い攻撃力を発揮させる為に。


「放せ!」


 バルバも決して力の強い男ではなかったが、両手と両足を使った反撃により、大貴族は投げ飛ばされる。

 背中が地面に付き、仰向けに倒れたダーインだったが、すぐに立ち上がった。

 そして懐から(さかずき)を取り出し、口の中の血を、唾でも吐くように杯の中へと飛ばした。


 すると、彼は一瞬のうちにバルバの獲得した情報を全て理解した。


「情報に偽りはナシ、か。そして、これがエルフの技法、というわけか」


 《禁魂杯》は血の持ち主の持っている情報を獲得できる。

 そこに例外はない。今まで誰も知り得なかったエルフの技法であっても、獲得することはできるのだ。

 たとえエルフの血を使ったとしても、それは人間の理解できる形式ではない。

 バルバが――クラークが調べ上げたのは、人間の技術体系下でも使えるように、ある意味翻訳を加えたようなものだ。


「何を、知ったような口を……!」

「知っているのだ。貴様が――貴様らが無数のエルフの屍を(つら)ね、その手に収めた技法が」

「《闇ノ百十四番・黒刎頸(ブラックディバイド)》」


 焦るように、上級術が発動される。

 だが、それとは対照にダーインに焦りはなかった。それはまるで、先ほどの彼と同じような余裕であった。


「《光ノ百二十七番・七星条(セブンスターズレイ)》」


 一発の細い光線がダーインの直上に放たれ、黒い力場の刃を消滅させる。


「まさか、こんなことが……!」


 順々に光線が放たれていき、合計七発に渡る攻撃が終了した頃には、バルバは絶命していた。


 攻撃性の高い、七発の光線を放つ術。こう言うと強力にも感じるが、実情としてはさほど大きな攻撃力は発揮しないのだ。

 ただし、磨き上げた場合はその限りではなく、二百番台にも相当する火力を叩き出す。

 ダーインにとっての切り札であり、若き日より磨き続けた、奥の手でもあった。


 正統王家の敵を討ったと安堵したダーインだったが、強烈な気配を察知し、空を見上げた。


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