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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1225/1603

18n

 首都の内部では、突如として現れた魔物がアルマなのではないか、という疑惑が広まっていた。


「外に聖女様が出たというのは本当なのか?」

「兵士が言ってたぞ。魔物の味方をして、何人も殺してるって」

「聖女様がそんなことをするはずがないだろう」

「だが、ライトロードの危機に聖女様が出てきてないということは――近頃は大聖堂にも……」


 首都に居ればこそ、その可能性は強く感じるものだった。

 アルマが全く姿を現さない、というのはそれほど異常事態なのだ。


 だからこそ、かのローチを打ち倒した時の奇跡さえも忘れ、目の前の疑惑に取り憑かれている。

 それがもし、ただの疑惑であればいいのだが、最悪なことに事実であった。

 陰謀もなく、アルマが味方の兵を殺しているという事実は変わらないのだ。


「どうにも、城外で暴れているのは聖女様のようですね」


 騒ぎの渦中に現れたのは、法王代理のバルバだった。


「我ら教会の戦力を送りましたが、彼らからの報告が正しければ、聖女様は……いえ、アルマ姫は魔物の仲間になったようです」

「まさか!」

「そんなはずがない!」

「……事実です。彼女は魔物を守り、仲間を殺さないでと言った。これはもう、疑いようのないことです」


 法王の代理は評判が良かった。

 というよりも、理想的な動きをし続けてきたのだ。

 先代法王のバールの汚名を晴らすように、教会の力を民のために使ってきた。

 こうして、教会にとって虎の子である戦士達を戦場に投入したのも、それまででは考えられないことである。


 その彼がこうして報告しているからには、疑いようのない事実と言うことが分かる。


「現在のライトロードの国主は正統王家です。ですが、()の者は先代法王の方針を大きく崩さず、そのまま維持させ続け、こうして光の国を危機に陥れました」

「そうなのか……?」


 僅かに聞こえた声を聞き逃すことなく、バルバは言葉を拾った。


「彼は自身の娘であるアルマ姫の監督ができていなかった。巫女が魔物に寝返ったということも隠し、自身の失策を知られないように手を打った。貴族階級の人間は隠すばかりで、我々国民に情報を明かそうとしないのですよ」


 絶望的な状況に、誰もが教会側の意見に同調し始めた。

 アルマが裏切るはずがない、という信用さえ揺らぎ、勢力は大きく傾いた。


 バルバは何かに気付いたように、通信術式を開いた。


「……捕らえましたか」

『はい』


 答えを聞くと通信を切り、城の方角を見た。

 すると、人混みを掻き分けながら、正統王家の当主が教会の戦士に連れられてくる様が見えてくる。


「彼こそが、此度の混乱の根源です」


 金色の髪に黄色の瞳、ライトロード人らしさを強く残した人物は、紛れもなく正統王家の当主だった。

 誰もがそれを認めざるを得なくなる中、当主は黙ったまま項垂(うなだ)れている。


「己の罪を認めるか?」


 彼は黙ったまま頷き、表を上げようとはしなかった。


「……この始末ですよ。貴族は皆、民を利用することだけを考え、動き続けてきた。こうなってはやはり、我々教会が――」

「その必要は、ありません」


 その声を聞いた瞬間、バルバは顔を(こわ)ばらせた。


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