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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1223/1603

16C

 数日後、予見していた通りか、魔物の大移動が始まった。

 とはいえ、当然予測していたことだからか、陣営は魔物の迎撃に移っていた。


「通すな! この場で押しとどめろ!」


 高みに陣取ったタグラムが鼓舞をし、最前線の軍人達が空を跳ぶように魔物へと挑んでいく。

 相手は勝手知ったる敵。怒濤の攻めは魔物を圧倒し、ナイト級、ロード級を次々と撃破していった。


「さすがは精鋭、負ける気などせんな」

「……妙だ。いや、見覚えのある盤面だ」


 シナヴァリアは彼の横で呟いた。


「何が面白くないというのだ」

「以前、タグラム殿にこの場を任せた時があったな」

「……あのローチとかいう魔物が現れた時か」

「そちらは敵本隊と戦い、今のように有利だった。だが、私とダーインの部隊は小型のローチに妨害され、突破に難儀した」

「それがなんだというのだ」


 シナヴァリアは戦場を指さし、語り出す。


「この優勢、作られたもののように見える」

「は?」

「相手はおそらく、リベラルとされる原始的な魔物だ。知性を有したオーダーの魔物がいるようには見えない」

「知ったようなことを……それに、魔物の言葉を用いるなど、邪に染まったか」

「それが正しい記号であるならば、使うのは当然だ」


 彼はやはり合理的な思想に(もと)づき、覚えたばかりの単語を使用していた。


「なにより、私が発見した変異体の魔物が見られない」

「なに……?」


 タグラムは戦場をしばらく見つめるが「わ、分かるのか?」と困惑気味に言った。


 それも当たり前のことである。戦場は数百単位の魔物、数千単位の羽虫(ワーカー)が飛び回っている上、人間がそれ以上に駆けているのだ。

 シナヴァリアは指揮を二人の代表者に任せる一方で、こうした観測手に徹していた。


 優秀な観測手がいるのであれば、それを目にするのも有効ではあるのだが、良くも悪くも彼に比類する者はいなかった。

 リアルタイムで状況を把握し、自分の考えによって指揮を飛ばす。これができるからこそ、彼は強かった。


「この大部隊は陽動と見るべきだ」

「まさか……」

「変異体が小隊規模で動いているとすれば、まず気付くのは難しいだろう。その上、彼奴らは気配の隠蔽を習得し始めている」

「そういえば報告に来ていたな。だが、あれは気配を完全に消し去るものではないはずだ」

「多少隠せれば十分だ。どれだけ警戒しようとも、小さな魔力の反応なら見逃してもおかしくない……この陣営を避け、遠回りすれば見つけるのは不可能だろう」


 超長距離探知など、巫女クラスでなければできることではない。

 視認にしても、陣営から遠く離れた地点を歩かれてはまず気付かないだろう。それはシナヴァリアにしても同じことだ。


「得策ではないのだが、タグラム殿に依頼したい」

「……なんだ」

「部隊の精鋭を率いて、首都に急行してほしい」

「何故、頼る。以前のように、あなたが行けばいい」

「今回は陣地を捨てる」


 タグラムの顔に緊張が走った。


「少数兵を運用するならば、タグラム殿の方が適切だ」

「それだけか?」

「……」

「何かを隠しているだろう。言え」

「おそらく、我々が大々的に陣を引き払えば、彼奴(きゃつ)らが奥手のを使うと思われる。その対処を任せるには、タグラム殿では不安だ」


 彼は一応、それを言うことで、何が起こるかを理解していた。

 だからこそ、一度は収めたが、二度も言われたとあっては吐いてしまう。本音を。


「それは言うことか」

「求められたからには、答えるのが当然だ」

「フン、やはりあなたは人を統べる才はないな……シナヴァリア殿」


 そう言うと、タグラムは視線を逸らしながら「そちらの計画を教えてもらおうか」と、受け入れる体勢を取った。



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