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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
1218/1603

11C

「さて、そろそろお話の時間だ」

「……なん、だと」

「人間はせっかちで、差別的で良くない。俺はもとより、お前らを殺しに来たわけじゃない」


 (たわ)け、と言いかけるが、彼は言葉を呑み込んだ。

 安易に煽るのは危険ということもあるが、確かに紅色の瞳を有している個体ならば、単騎でこの陣営を破壊するのは容易だろう。

 にもかかわらず、相手は人型の姿になり、こうして幕営内で待っていたのだ。


 しばらく考え、彼は頷いた。


「話し合いが所望とあれば、こちらも望むところだ」

「お前は比較的、我々に近い性格らしい。これはきちんと話し合いができそうだ。素晴らしい」


 否定するでも肯定するでもなく、シナヴァリアは「その代わり、この陣営の代表者二人の同席を認めて欲しい」と要求に入った。


「必要というのであれば、了解しよう。一人で決めることでもないしな」


 それを聞き、シナヴァリアは表立って通信を行う。


「ダーイン、タグラム殿を連れて来てくれ」

『宰相、そちらで何が――』

「今より、話し合いが行われる」

『誰と』

「……魔物と、だ」


 ダーインは言葉を失うが、すぐに『分かりました』とだけ返答して通信を切った。


 ほどなく、二人の代表者だけが呼び出される。もちろん、魔物が来ているという情報は、兵には伏せていた。

 タグラムひどく驚いていたが、ダーインは黙ったまま、席に座る。


「紅眼の魔物、ですか」とダーイン。

「なに!? ……確かに、これは」

「そう、俺はお前らが殺したローチと同等の強さを持つ魔物だ」


 平然と人間の言葉を紡ぐ魔物に驚きながらも、タグラムは先んじて切り込んだ。


「話し合いと聞いたが、何を話し合うつもりだ。我々が互いに語らえることなどありはしないはずだが」

「それはそうだ。俺達は人類を苦しめることが目的だからな」


 それを聞き、全員が厳しい顔をした。


「やはり話し合いなど――」

「何故、人類を苦しめると言う? 滅ぼす、ではないのか?」シナヴァリアは問う。

「……それについては後で話すとしよう。俺としては――俺の派閥としては、お前ら人間と共栄関係を築きたいと思っている」


 これは一言前とは別の方向で、三人を驚かせる。


「魔物が共栄関係だと? 闇の国を裏切るつもりか?」

「あいつらに力を貸していたのは、魔物にとって都合が良かったからだ。連中はほどほどに世界を混乱させる力を持っていた――だからこそ、手を貸しただけ。今はもうカシは残ってない」

「力がなくなれば用済み、ですか」

「お前達は例外だ。こちらの計画では、人間側が呑んでくれさえすれば、互いに殺し合う必要はなくなる」


 まるで理想的な提案だが、シナヴァリアは別の点を注視し続けていた。


「俺の派閥、と言ったな。まるで、魔物も一枚岩ではないように聞こえるが」

「ご名答! 魔物の大半は未だに、闇の国についてこっちの世界を滅茶苦茶にしようとしている」

「お前達は違う、と」

「もちろん。俺達は白痴のような魔物と違い、明確な知性を獲得している。構成員も魔界では上位の個体だ……そして、今後間違いなく、俺達の思想を理解する奴は増えてくる」


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