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大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
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 俺は深呼吸をすると、《光の門》へと足を踏み入れた。今度こそは、意識を保って奥までいき、スカーレちゃんを助ける。

 覚悟こそ決めたが、すぐに視界がブレた。もはや、意思などでどうにかできる次元ではない。

 ただ、そこで引き返すことはせず、俺はかつてのように感覚に任せて歩みを進めた。

 いつかのように、《光の門》中心部が視界に映り込んでくる。

 ……また、ここに来てしまったか。

 中央には、俺が落ちた大穴がある。……ただ、あの時に途切れていた橋は直っているようだ。

 死の欲求を押さえながらも奥へと進み、橋に足を乗っけた。その瞬間、橋が崩れ出す。

 俺は急いで渡りきり、どうにか無事に進むことができたが、複数人で来ていたのであれば何人かの犠牲が出ていただろう。

 クラークが何かを仕組んでいたのか……いや、今は早く進むべきだ。

 螺旋階段を昇り、上へ上へと進んで行くと、広い部屋に到着する。《光の門》の影響も少なくなっているのか、意識も明瞭だ。


「まさか、善大王が来るとは……」


 そこに立っていたのは、間違えるはずもない、管理官のクラークだ。


「スカーレちゃんを返してもらおうか」

「このエルフですか? ……そうはいきませんねぇ、これは私の大切な実験材料なんですから」


 そう言いながら、スカーレちゃんの肌に手を添わせ、下卑た笑いを浮かべる。


「お前……っ」

「たかがエルフですよ? 稀少ではありますが、民ですらありません……ムシケラ程度の命なのですから、善大王が動く必要はありませんよ」


 確かに、スカーレちゃんは光の国の人間ではない。だが、それでもこの子は間違いなく生きている。

 そして、何よりもこの子は幼女なのだ。それを見捨てられるはずがない。


「お前、何の為にこんなことをしている」

「ハハ、私はエルフの技法の研究をしているのですよ。おそらく、この一体でエルフの秘密を解き明かし、人間を新たに進化させる力が得られるはずです」

「何が言いたい」

「私の研究を援助していただけるのであれば、この国に残りましょう。断るならば、闇の国に亡命します。どうしますか? エルフの技法が欲しければ――」


 憤り、俺は無言で《魔導式》を組み上げ、術を発動した。

 光弾がクラークの首筋を掠り、壁に衝突して消える。


「エルフだろうとも、その子が幼女ならば……助ける」

「冗談とばかり思っていましたが、こんな場で言うなんて――本当な馬鹿者らしいですねぇ」


 台座の上に置かれたスカーレちゃんの場所まで行くのは不可能。俺が今すべきことは、こいつの撃退。


「《光ノ二十番・光弾(ライトショット)》」


 高速で《魔導式》を展開し、術で攻撃する。クラークは光の国の人間だが、俺の戦闘については全く知らなかったのか、驚愕の表情を浮かべる。

 今度は直撃狙いだったが、クラークも確実に回避してくる。ただ、それでも面制圧していけばいいだけのこと。

 俺は下級の術、特に《光ノ二十番・光弾(ライトショット)》の練度を高めている。他の上級術クラスは威力こそ高いが、所要時間が掛かり過ぎる。

 逆に、このような下級術はかなりの手数で打てる。その上、鍛えさえすれば十分な火力にもなってくる――まぁ、総火力重視の情勢を見るに、俺は異端と言えるが。


「変わった戦い方をしますねぇ。いえ、悪くはないのですが」

「ハッ、余裕を持てるのは今の内くらいだぞ?」


 クラークは《魔導式》を展開していく、それが中級から上級まで伸びることは知識と経験で理解できた。


「《光ノ二十番・光弾(ライトショット)》」


 凄まじい速度で発動された光弾がクラークの《魔導式》を打ち抜き、強制的に解除させる。

 そのまま追撃でもう一発放つが、これはやはり回避される。


「妨害されて火力を高めている場合ではありませんねぇ」


 クラークも対抗するように藍色の《魔導式》を展開し、術を発動してきた。


「《闇ノ十四番・闇刃(ダークエッジ)》」


 規模を落してきた。それでようやく俺の速度に追いつくという程度。さすがにここまでの下級術を《魔導式》段階で打ち落とすのはできない――どちらにしても、割に合わないしな。

 藍色の刃が俺の方に投げつけられるが、そんなものを回避できない俺でもない。

 軽く回避し、《光ノ二十番・光弾(ライトショット)》を発動した。

 咄嗟に緊急回避に移ったが、それでも攻撃は掠る。そして、俺の術は既に発動している。


「なッ――この速度で!?」


 もう一発の光弾がクラークに直撃し、吹っ飛ばされている最中にさらに光弾を放つ。

これこそが俺の戦闘スタイル、一発一発の打点よりも手数を増やして敵を制圧する戦法。

ただ、殺そうとはしていない。しようとすれば簡単だが、こいつの目的がなんなのかを探らない限りは殺す意味もない。


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